アイメイト バーベリーとの出会い
(5)穴があったら入りたい!

私は、いろいろな基礎訓練を全く受けてなく、そのため、失敗も人一番多い。気をつけてさえいれば、まちがわなくてすむことも、ついついあわててしまい、失敗のくり返し。今までに、とりかえしのつかないまちがいはないが、青あざ作りの名人だ。そのため、はずかしい思いも何度したことか?私が、つくずく直そうと思うことに、相手が誰なのか解らない場合、「自分から声をかけること」がある。それは、今までに何度もはずかしい思いをしてきたからだ。 昨年の暮れ、近くの家で大掃除をしており、その家の人が一生懸命何かを洗っていたので、「みがきよるかい?せいが出るねえ」と、大声で叫んで通ったところ、「良いお天気でございます」と、聞いたことのない人の声が帰ってきた。”あれ、今の人は・・・・?’ 親戚の人が来ているのも知らず、いつもの調子で話しかけ大はじをかいた。こんなまちがいは日常茶飯事で、気がついた時の調子の悪いこと・悪いこと。その上、手をふりながらまちがえた時などには、その手をかくしようがない。手をおろしながら、もぞもぞと背中の方に隠すのだが・・・。「気をつけなければ・・・・。」と思うが、なかなか直りそうにない。このような失敗は、相手が離れているからまだましで、すれ違いざま息子に、「今日は、本当に暑かったですねえ。 こう、暑いとたまりませんねえ」と、どこかのお客様かと思い、丁寧に頭を下げた。すると、「お母さんなに言いよるが、ボクぜぼく!」と、息子にまで笑われた。

また、ある時などは、お巡りさんのカンバンに向かい、「毎日ご苦労さまです」と、深ぶか頭を下げたり、「こんばんは」と、連れ合いに挨拶したこともある。まあ、その時のはずかしいこと・はずかしいこと!!。それと、近所には、私と同じ名前の人がおり、その人を呼んでいるにも関わらず大声で返事をしたこともある。 「みっちゃん、ええがじゃないけんど、ばあちゃんが漬けた大根の漬け物いらんかい? 」と聞かれ、「大根の漬け物は、家のものが好きやけんちょうだいや」と答えた。ところが、外に出て見ると、隣の玄関口に、ヨシコばあちゃんは立っていた。 すぐに、家の人が出て来て受け取っていたが、その時、「隣のみっちゃんも欲しい言いよるけん、半分持っちいちゃるけん」と言っていた。 私ははずかしくて、家の中に飛び込んだ。その後すぐ、何も聞かなかったような顔をして、ヨシコばあちゃんが漬け物を持って来てくれた。私は調子が悪く、まともに顔を合わすことができなかった。”気をつけてさえいれば、こんなまちがいはしないですむのになあ’と、反省の繰り返しだ。その上、最近では、バーベリーとの失敗も加わり、反省の日々に拍車がかかっている。彼女との失敗は、私の不注意ば かりだ。 ある時などは、いつもの散歩コースを歩いていたら、バーベリーが急に止まってしまい、”邪魔になるものは何もないはずだがなあ’と思ったが、ねんのために足先で探ってみたが、やっぱり何もない。私は、「進め」の指示を出したが、彼女は動こうとしない。”どうしたのかなあ?’ 何度も確かめてみたが結果は同じこと。 私は、バーベリーのがんとした態度に、”何か、あるなあ?’と思い、できるだけ手を伸ばして確かめた。そこには、な・なんと、大きな「蛇」が横たわっていた。私は、恐ろしさのあまり、大声をあげ、飛び上がるように立ち上がった。「バーベリー、蛇が恐かったのか?」 バーベリーは、大事件を解決したかのように「フウー!」っと、長いためいきをついた。 久しぶりに、蛇の感触を味わったが、こんなことは二度とお断りだ。また、ある時などは、はじめてバスに乗り、宿毛から帰る途中、車内は結構すいていたが、後部座席の方を指示し空席をさがさせた。 するとバーベリーは、少しきょろきょろしていたが、一番後ろの席を教えてくれた。私は、席に手を乗せ左右に動かし空席を確認し、「ちょこん!」と座ったとたん!! 「オオー」と言う、男の人の驚きの声。そう、私が空席だと思ったところは、男性の膝の間だった。男の人は、足を大きく広げて座っており、バーベリーと私は、空席とまちがえてしまったのだ。男の人も驚いたろうが、こっちも・こっちで、そりゃもう驚いたこと・驚いたこと。「穴があったら入りたい」と言うのは、まさにこの事だ。

それと、バスでは、まだ失敗がいっぱい!それは、バスの乗り降りを練習するため、山田から山田橋を経由して、有岡まで行くためバスに乗った時のこと。私は、その日は、バスに乗る気はなく、お金を確かめていなかった。ところが、途中で気が変わった。バーベリーは、上手にバスの中へ誘導してくれ、気持ちよく乗っていたところ、サイフを持っていないことに気がついた。”困ったなあ 小銭がないぞ’ 私は、あせりながらリュックの中をさがしてみたが、どうしても見つからない。鞄の中には一万円札はあるが、まさか、万冊で払うわけにもいかず・・・・。困りきって腰に手を当てたところ、何か?コインのようなものに触った。”あれ、何だろう?’手にとって確かめて見ると、今朝洗濯したときに、ジーンズのポケットの中に入っていた50円だった。 ”50円デハなあ・・・’ もたもたしていたら、あっというまに有岡に着いた。私は、運転手に50円しか小銭がないことを話した。すると、運転手は、「身体障害者の人は、手帳があれば半額ですから、50円では少し足りませんが、今回はそれでかまいません。次からは、小銭を用意して乗るようにしてくださいね。それにしても、盲導犬をはじめて乗せましたが静かですねえ。」 「本当にすみませんでした。」私達は、3区間を50円でバスに乗った。「バーベリー、また、失敗したなあ」今回は、男の人の膝の上に座った時ほどのことはなかったが・・・・。 まだ一度も、失敗せずにバスに乗ったことがない。”いつになれば、スムーズに乗ることができるのか?’。

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