アイメイト バーベリーとの出会い
(4)これからが、本当の二人三脚のはじまり!

バーベリーと暮らすようになり、4つの季節が流れた。子供達も、それぞれ大学生と高校生になった。本当の意味で、これからが彼女との二人三脚だ。我が家には、私の他には女性はいなくなった。今まで、娘に頼んでいたこともすべて自分だけでしなければならない。女性としての買い物もあるし、それなりの仕事もある。4月のはじめには、娘も岡山に行った。「バーベリー、お姉ちゃんも行ってしまったなあ。これから、ますますお前が頼りだ。よろしく頼むからな。」私は、彼女に向かい合って座り、頭をなでて頼んだ。バーベリーも気持ちが解るのか?、私の膝に前足をかけ、あまえるようにすり寄ってきた。 

この1年間は、本当にめまぐるしく過ぎた。私達は毎日出かけ、多くの人に会い・いろいろなことを知った。最近では、すっかり忘れていた季節の変わり目・人々の出はいり・そして、新しく出来ていた店や家・・・など、地域の暮らしも変わっていた。「バーベリー、こんな所に家が建っているようだ。 以前は広場だったけどなあ・・・・。」などと、独り言のように彼女に話かけた。”数年の間に、世の中がずいぶん変わったんだなあ。’バーベリーは、今日まで大きな病気もせず、毎日どこへでも私を誘導してくれた。 今では、彼女のいない生活など想像できない。犬との生活は良い時ばかりではないが、毎日ブラシをかけたり耳掃除をすること・・・など、生活の一部になってきた。「犬がいると世話がたまらんろ?」と聞かれるが、彼女のしてくれることを思えば、世話などとるに足らないことだ。最近では外出する事も増え、何事にも欲が出てしまい失敗することも多くなった。”まあ、今にはじまったことでもないか?’ 

思えば1年前の今頃は、丁度合宿訓練の真っ最中。 マスターしなければならないこと・全てがはじめての経験ばかり。 休むこともできず、ただ言われるがままに時が過ぎた。田舎で生活している者にとって、都会での寄宿舎生活は、想像以上に神経を使う。その上、夜通し何かの音がし、周囲の雑音に慣れるまでにも時間がかかった。遥かかなたのいぬの遠吠えだけが、静かな風に乗って聞こえるだけの田舎で暮らしている者にとって、あの騒々しさは本当に疲れたなあ。合宿訓練は4週間だが、あまりの厳しさに途中でリタイアする者もあり、1日いちにちが真剣勝負。合宿訓練は、視覚障害者の歩行訓練だけでなく、食事のマナー・日常の挨拶・・・など、社会人として常識のある態度も要求される。訓練が終わり、我が家に帰るときには、誰もが「もう、二度と訓練なんてゴメンだ!」と思うようだ。私も、例外ではなかった。それが、何年かたちアイメイトをリタイアさせると、また二廻目・三廻目・・・と、訓練を受けると言う。 それだけ、アイメイトとの暮らしが、自分にとって必要で素晴らしいものになってくれるからだ。いつの間にか、自分その者になると聞く。卒業した次の朝には、穏やかに月日が流れていた頃・失明してからの日々、そして、これからの彼女との暮らしが、青い空にまっすぐ引かれた飛行機雲の用に思えた。

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