(10)しょうしな」って、どう言う意味? あー、待ちに待った休日。 私は、この頃になってくると、身も心もくたくたになってきていた。何と言っても、歩く距離が半端じゃない。 慣れない寄宿舎生活も手伝って、体調も崩れてきた。それに比べて、彼女達の、元気なこと・元気なこと。頭の切り替えが素晴らしいのか?全く、疲れを感じさせない。マコさんなんかは、休日を利用して、タイ語を勉強していた。沖縄の彼も、何かを・・・。私だけは、勉強どころではなく、自分の体調を整える事が精いっぱいだった。やっぱり、団体生活は、いつも、見られているようで落ち着かない。 何年も、寄宿舎生活をしてきた彼女達とは、ここでも差が出てしまった。
このとしになれば、頭の切り替えが上手く出来ず、何もかも引きずってしまう。私は、休日でも、訓練の事が離れず、いつも、気が張りいらいらしていた。その点、彼女達は、本当に頭の切り替えが上手い。「訓練は訓練・休みは休み!」と、何の、不安もなさそうに、はしゃいでいた。私自身、そんな彼女達を嫌いではなかった。と言うより、むしろ好きだった。
彼女達のおかげで、ずいぶん救われた事もある。中でも、彼には、二会もマッサージをしてもらい、感謝している。本職とは言え、彼のする事は、丁寧でなめらか。マッサージをしてもらいながら、私達は、いろいろな事を話した。彼は、話題が豊富で、すべての事に情熱をもっていた。その中で、私達は、パソコンや障害者の事について話した。パソコンの事は、それなりに話が出来たが、障害者の事になると、あらゆる勉強をしており、自分の世間知らずにあきれた。
私は、狭い意味での考え方をしていたような気がした。世の中すべての事に興味をもち、自発的に活動していた。彼と話していると、なぜか、力がわいて来るのが不思議!。合同訓練に入るまで、約6カ月もの間、母親といっしょに歩き、体調を整え、訓練にすべてをかけていた。なかなか、まねの出来ることではない。彼自身、いままでに、ずいぶんつらい思いをしてきたことが、彼の話ぶりから、気持ちが見てとれた。
休日の、もう一つの楽しみは、少しオーバーぎみの世間話。長野県の彼女なんか、稲刈りに行く時、知らなかったとは言え、「パンプスをはいて行った。」と言う。「田植えとちがって、水がないからだいじょうぶ!」と、本気で思ったらしい。知らないってことは、本当に・・・。
一方、マコさんと言えば、いつも、何かにぶつかり、生傷がたえず、通行人に、バンソウコウをもらったこともしょっちゅうとか。虫も殺せないような顔をして、する事は、本当に大胆。マコさんの、チャレンジ精神には、一同脱帽。全盲の彼女が、四階の階段の手すりをすべりおり、始末書まで書かされたとか?その話を聞いた彼が、「想像するだけで心臓が踊る!」と言うから、これまたおもしろい。そう、彼は体はでかいが、高所恐怖症だった。この頃になると、「このクラスは、女性の強いこと・強いこと」と言うのが、彼の口癖になっていた。こんなクラスメイト達は、地方に住んでいながら、まったく、方言を使わなかった。
私は、最初は、方言混じりで話していたが、ある時、「こんな事では、ほんまにしょうしな・この頃、掃除せんもんやけん、さがれてさがれて・・・。」などと言うと、必ず、「エッ?」などと、何回も聞かれ、その内、いちいち説明するのもめんどうくさくなり、それからは、標準語で話すようにした。まわりが、すべて標準語のため、説明するより簡単。協会では、職員も、すべて標準語で話していた。
言葉使いでの、おもしろい話がある。以前のクラスに、九州出身の生徒がいて、最初は、標準語を無理して使い、アイメイトをほめるときにも、「良い子・良い子!」と言っていたのが、ある時、アイメイトが、きちんと仕事をしてくれたのが何よりうれしくて、「よおっしゃ・よっしゃ、よかばってん!」と、さけんだものだから、一同大爆笑。「やっぱあ、なれんこと言うがは、ほんまに骨が折れますたいネ!」
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