(9)さあ、践み切りコースの始まり! 初めは、一人ひとり出発した。 何と言っても、見えない者にとって、ふみ切りは、何となく不気身。陽水の「開かずのふみ切り」・・・では?「山戸さん、行きましょう。」"何となく、気がおもいなあ!'私は、しぶしぶ出発した。
このコースは、思っていたよりすごい。青梅街道まではスムーズに行く事が出来たが、交差点をわたる事がひと苦労。どういうわけか、何回指示を出しても、バーベリーがわたってくれない。数回試してみたが、結果は同じこと。"おかしいなあ、邪魔になる物は何もないはずだが・・・'私は、どうなっているのか?納得がいかなかった。気をとり直して、何度かやり直してみたが、同じ事のくり返し。バーベリーは、ストレートの指示に、レフトに行ってしまう。私は、心の中で、"中橋さんは見ているはずなのに、はやく教えてくれたら良いのに・・・!'と、いらいらした。やがて、中橋さんも見かねたのか?「バーベリーが正しいのです。横断歩道は、もっともっと左側についています。信号を、間違える事はないと信じていましたので、声をかけませんでしたが、もう少し、犬を信頼して下さい。」と注意された。
私は、交差点の事ばかりが気になり、横断歩道の位置までは気が回らなかった。"バーベリー、すまん・すまん!これからも、しっかり頼んだぞ'私達は、気をとり直して歩き出した。
「ここは、信号のない交差点です。ここからは、一方通行になっています・・・。」いろいろな説明を聞きながら進み、やっとれいの場所に着いた。地図を、思い出して歩いてみると、"なるほど・なるほど、思っていたよりすごい!' ふみ切りも広いし、車の量も半端じゃない。このコースは、一人歩きの時には、とてもあぶない。青梅街道を過ぎれば、歩道は全くなく、車が建物すれすれに走っている。私は、コースを覚えるのも大変だったが、アイメイトを、左サイドに寄せて歩く事に神経を使い、帰って来たときには、立ちくらみがした。中橋さんは、「お疲れさま!」と言って、肩をたたいてくれた。長年の経験で、生徒の気持ちが手にとるように解って胃る。
私は、帰ってからも、しばらくは、緊張がとれなかった。これから、シャバ!に出るためには、どうしてもクリアーしなければならない。"よくまあ、こんなコースを探して来たものだ!'あー、はやくお街に出たい。
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