(7)点字の地図が解らない! 言われるままに訓練をかさね、2週間が過ぎた。今まで、ミーティングの時間がうまくとれず、中橋さんの悩みの種になっていた。ミーティングの時間はとっていても、話題が横道にそれる事が多かったが、ここにきて、やっとスケジュールの調整がついた。
ミーティングは、アイメイトに関する講義・次のコース説明が主になっている。アイメイトの話は、興味深く聞くことが出来るが、コース説明が今一つ苦手。なぜなら、私は、今まで点字の地図を見たことがない。他のクラスメイト達は、授業で何時間も使っており、コース確認の地図などとるにたらない事。それに比べ、私は、地図の全てが初めての経験。指先の感覚だけで、コースを覚えるのも一苦労。一応、言葉で説明があるが、なかなか、一度聞いただけではコースが頭の中に浮かんでこない。その後、地図に触って完全に覚えるのだが、それが、そう簡単に問屋がおろさない。
私は、とうとう最後まで、地図に触れて覚えることが出来なかった。私は、自分なりに、頭の中に地図を描いた。これまで、私は、視覚障害者の自立のための、歩行訓練・点字、そのほか、生活訓練の指導を受けてなく、全ての訓練を、長い間受けている彼女達とは、根本から違いすぎた。
私は、今日まで、白杖一本で歩いた事がほとんどない。杖一本で、東京の町を、7年間も飛び回っていたマコさんとは、出発点からはやくも違う。だが、私にも、誰にも負けないことが一つだけあった。それは、信号の判断。たいていの人は、車の流れを聞いて判断しているが、その方法では、右折・左折の場合、車の量が多い場所では迷うことも少なくない。私は、車の流れも聞いているが、同時に、一台の車に搾り、その車が交差点に入り、そのまま直進したか?それとも、左右どちらかに曲がったのかを、車全体の流れと一緒に、音を整理して聞いていた。この癖がついていると、広い道路での青信号でも、直進車専用・右折車・左折車、または、歩行者専用の青なのかがはっきり解ってくる。この方法は、間違いが少なく、信号の判断に自信がつく。
私が、彼女達にほこれることは、後にも先にも、信号の判断だけ。けど、この事は歩行訓練では、かなり重要になってくる。信号の判断が正確でないと、歩行中のリズムがつかみにくい。
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