清楚この上ない、、、と、バオバブの花について書いた。しかしこれには補足がいる。
テニスボールくらいな太さの丸い蕾が細長い紐の先にぶら下がる。それが一本の木にいくつもいくつも、何十となくつく様は、綾小路きみまろなら何と表現するだろう。おそらくは制服姿のなんとやら。
ハスの蕾は、花びらが何重にも重なって、開く前は珠のような形になる。バオバブの蕾は、遠目にはハスの蕾を逆さにつるしたように見える。けれども構造的には違う。ハスとは全然似ても似つかぬものなのだ。
珠のように見えているのはガク。花本体はそのの中に納まっていて、成熟するにしたがって、口を開いた珠の先からだらりと下がる。そのバオバブの白い花、これが全く仰天もの。蕾の時の可憐さからは想像もつかない、一種度肝を抜かれる形のケバさ。その落差には唖然とする。
蕾がついて開くまでには何日もの間がある。言うならば青春時代は、花の命の暦の上では、かなりな長さに相当する。けれども、一度口が開いて白い花弁がのぞいたら、あっという間、ほとんど一日、二日のうちに、残りの命を駆け抜ける。しかも蕾のしとやかさ、清楚さに引き換えて、その受粉前、いわば盛りの花のなんとけばけばしいことか。
花弁は白いフレアスカートに似ている。問題は、その中にあるおしべとめしべのついた部分。言わば生殖器の部分。これくらいあけっぴろげで、スカートのど真ん中から飛び出して、さあ来てくれ、ハチでもチョウでもはげ頭のコウモリでもと、イラハイイラハイ挑発されると、気の弱い私なんぞは、、、何の話じゃ。
現金なものである。受粉がすむと花はすぐに茶色く汚れて、見るも無残なものになる。あっという間のことなのだ。うちのカミさん、確かに結婚前とは違う。しかし、あれほどまでの違いはない。花の命は短いと歌の文句じゃないけれど、バオバブくらい盛り短く、受粉に対する貪欲さ剥き出しで咲く花を、私は他には知らない。
種子の発芽力は強い。だから日本に持って帰って鉢にまいた。夏の間、ぷっくり下膨れの胴に細い枝をつけて濃い緑色の葉が付くまでには育った。しかし、どうしても冬が越せない。ビニールで囲ってもみた。室内に入れてもみた。温室のない我が家では、いくら南国高知でも若木の間は難しい。一定の大きさまで育って、幹が固い樹皮になったら露地でも耐えられはしないかと、かすかな期待はあるのだが、、、。
(ここからは後日談です。)
私が花博に合わせて日本に送ったバオバブ。大阪国際交流センターの盆栽は、いつの間にやら枯れてしまったと聞いた。ユニトピアささやまは温室がなくなって、どこに行ったか不明であるとも聞いた。
別の企画で送った京都府立植物園のバオバブ。長い間、どうなっているのか面会をためらったあの花嫁。既に立派に根を張って、毎年、花も実も付くまでになっている。以前会った元園長の方からは、日本各地の植物園の温室にバオバブの木もあるし、花も実も付けるものがあるけれども、このバオバブくらい低い、ほんの少し見上げる程度で観察できるものはないとも聞いた。セネガルでは乾季には落葉する。しかし、植物園の温室では、落葉する前に新しい葉が出てくる、半常緑になっていた。
もしも興味のある方は、京都府立植物園にお問い合わせください。温室内の通路のすぐ傍にあります。セネガルから嫁入りで日本に来て、今は幸せですかと、一声かけていただけるなら幸いです。
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