バオバブ@ シェルギ(モロッコの熱風)

バオバブはモロッコにはない。ニジェールにもあるにはあるがセネガルほどには多くもないし、これはと思えるサイズの木でも、セネガルのそれに比べればまだまだ、、、ということになる。したがって、バオバブは何といっても、その目撃される数といい大きさといい、この地域ではセネガルの木ということになる
セネガルのバオバブは、インド洋にぽつんと離れた東アフリカの島国、マダガスカルのように何種類もがあるわけではない。ただ一種類、アダンソニア・ヂジタータという種類があるだけなのだが、これがなんとも、西アフリカで生活したことのある人間には、一種の郷愁とでも言おうか、忘れがたい強烈な印象を与える樹木なのである。
まずはその風貌。罰があたって神様にさかさまに植えられた木、、、とも言われるそのとおり、乾期の葉っぱのない時期に見ると、まさしく、「星の王子さま」に出てくる絵そのままに、根っこが地面を突き破ってのび上がってきた、そういう印象をうける。
大きさが大きい。セネガルでは、一九七六年に南のギニア国境に近いケドゥグで計測された幹周二十四メートルのものが最大とされている。私はそれに次ぐ二番目という木は見た。ためしに中心の空洞部分に入っても見たが、じわっとした湿気があって、仮に畳を敷いたとしても、とても長居をしたい気分にはならなかった。
これがもろい。見かけは立派な樹木なのだが、中の繊維は大量の水を含んで、スカスカである。だから割と倒れやすいし、大木になれば中央部分が空洞化する。
この空洞が、死体を埋葬すれば土地が穢れて災厄をもたらすとして、土葬にすることを忌み嫌われた被差別階級グリオの墓に使われた。今はさすがにそのような風習をそのまま踏襲している風はない。けれども、半分は観光客相手に、中にあった骸骨をそのままにして、いまになおその名残を伝えている場所がある。
花は白く清楚である。細く長い浅緑の茎の先にテニスボールくらいのサイズの蕾がぶら下がってつく。蓮の蕾を連想する。そうして白い花弁が徐々に開いていく。
一説には、この受粉はコウモリが行うとされている。
コウモリが横恋慕?夜陰にまぎれてバオバブのあの白い花にしがみつく?どっちもぶら下がっている点では同類ではあるけれど、真っ黒なコウモリが、あの清楚この上ない花と?何とも、その、イメージが?いえいえ、実は蜜を求めてくるコウモリが、蜂や蝶の代わりを務めるということです。清楚純情を絵に描いたらこうなろうかというあの花を、口のないのを良いことに、手ごめ足ごめ、ヒヒじじい?それはチョッとねえ、あなた、連想の大飛躍という奴です。
 果実は「猿のパン」とも呼ばれる。ラグビーボールを少し小柄にし、いびつにした感じの実が、葉の落ちた乾期に一杯ぶら下がっている姿は、知らぬ者ならあれは一体何なのだということになる。表面はビロードを思わせる薄い毛に覆われているが、決して柔らかいわけではない。割ると中には、白い果肉の小部屋が一杯つまっている。各部屋の芯には黒っぽい小ぶりの種子が1個ずつある。そうしてそれらの小部屋の間には、薄茶色の血管を思わせる筋が何本か走っている。
 この白い果肉は、食べるとラムネ菓子そっくりの味がする。まだ若い実はつぶしてジュースにする。子どもたちの重要な栄養源でもある。
 この、バオバブを日本に持って行かなくてはならない、それが私のプロジェクトとは別の業務に入ってきた。聞けば「盆栽」があると言う。
 えー、バオバブの盆栽? 誰だって「ウッソー!?」と言うところだ。

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