アイメイト協会とアイメイトたち

視覚障害者を安全に、そして、確実にアイメイトが誘導。
アイメイトとは、私の愛する目の仲間という意味。
視覚障害者の目となって、自由な歩行や日常生活を支える易しく、たのもしいパートナーです。全国各地で活躍しています。

アイメイト協会では、単に訓練だけに終るのではなく、視覚障害者の社会参加をも促進しています。
1人でも多くの視覚障害者が積極的に生活ができるように・・・。
さあ、犬と人との素敵なペアーが、今日も街中を風を切って歩きます。

1957年(昭和32年)、我が国初の盲導犬を誕生させたアイメイト協会。
以来、およそ半世紀に渡り、多くの優れたアイメイトを送り出し、視覚障害者の社会参加を促進して来ました。

アイメイト協会の仕事は、大きく分けて2つあります。
視覚障害者の日常に大きな役割を担うアイメイトの育成、そして、もう1つは、そのアイメイトを使う立場にある視覚障害者への歩行指導、および、日常生活指導。
視覚障害者の自立をサポートするのが、協会の最大の目的です。
視力はなくても、心の視野の広い明るく積極的な社会人作りに正面から取り組んでいます。

では、協会の活動を具体的に紹介しましょう。
まずは、アイメイトの育成。
目が見えない状態で街中を歩くのは、とても危険を伴います。
でも、アイメイトが一緒なら大丈夫。
アイメイトは、視覚障害者の目です。
そのため、安全に誘導する技能と服従心が必要になります。
アイメイト協会での訓練は、およそ3ヶ月間ですが、全ての犬がアイメイトに適している訳では有りません。
やはり、素質が問われます。素質の良い子犬を産ませ、そして、育てるには、実に多くの人の協力があるのです。

アイメイトに適した優秀な子犬を産ませる繁殖奉仕者、生まれた子犬は2箇月経つと、飼育奉仕の家庭に預けられます。子犬を情緒豊かな性格に育てるためです。
1年間、暖かい家族の愛情に包まれながら、子犬は成長して行きます。
人間社会で、家族の一員として、様々な経験を積んで育てられた素質の良い犬たちだけが、アイメイト協会での訓練に入ることができます。

生まれてからおよそ1年2ヶ月、協会に戻って来た犬たちは、しつけや誘導など、盲導犬として必要な能力、全てを身につけていきます。

では、アイメイトがどんな能力を持っているのか見てみましょう。
視覚障害者が信号のある横断歩道で、歩行者用の押しボタンを探せと命令すれば、犬はそこまで誘導します。
駅で切符を買う時にも、券売機を探せと命令すれば、鼻先で教えます。

よく利口な犬が視覚障害者を連れて歩いていると受けとられがちですが、決してそうではありません。その逆なのです。
使用者である視覚障害者が、全ての指示を出しているのです。
電車の中で椅子を探せと命令すれば、このように犬をコントロールしているのは、人間なのです。

視覚障害者は、曲がり角を右に曲がるのか、左に曲がるのか、駅のホームで何番線の電車に乗れば良いのか、いくつめの信号をどちらに渡れば良いのかなど、目の見える人と同じように下調べをしていきます。

例えば信号、犬は信号の色は分かりません。
自分の進行方向に、人や車の流れている音がすれば青。
自分の前を車が横切っている音がすれば赤というように、視覚障害者が音を聞いて判断しています。
 ですから、犬が人間を連れて歩いているのではなく、人間が犬を上手くコントロールしているのです。

路上に置かれている障害物も、上手によけるように訓練されています。
例え犬が通れても、人間が通れない場所には進みません。
止まって障害物のあることを伝えるか、そこをよけて通ります。
視覚障害者にとって、路上で危険に合うということは、命に関わる重要な問題です。
アイメイトは、常に視覚障害者の安全を配慮しているのです。
障害物にぶつからないよう、注意深く歩きます。

では、横断中に車が飛び出して来たらどうでしょう。
使用者がいくら進めと命令を出しても、決して進むことはありません。危険だからです。
車が去り、安全を確認したうえで渡るよう訓練されています。

このように、アイメイトは視覚障害者の目であり、記憶力や判断力がとても優れているのです。

こうした訓練の後、もしアイメイトとして不適格であれば、一般家庭に引き取られます。

また、年をとり役目を終えたアイメイトを引き取る家庭もあります。
多くの人たちが、アイメイトの生涯を見守っているのです。
手から手へと、繋いで行くのがアイメイトなのです。

犬の訓練以上に大事なのは、視覚障害者の歩行指導と、日常生活指導です。
アイメイト協会では、健常者と変わりない日常の生活を送れるよう、歩行指導や生活指導をしています。
アイメイトを連れて街中をどう歩けば良いか、また、どんな指示を与えれば良いかなど、視覚障害者はアイメイトとペアーを組んで、およそ1ヶ月間協会に宿泊して訓練を受けます。

この期間中に、歩道橋や分岐点、繁華街での歩行、乗り物の利用法など、実生活で起こりうるあらゆる状況に対処できるようにならなければなりません。

犬は本来、主人を喜ばせようという忠誠心が優れている動物です。
 ですから、視覚障害者が単独で自由に歩くためには、アイメイトに正しく命令を出さなければなりません。
一方、アイメイトも言われた通りのことが正確にできなければならないのです。

犬と人間、両方の息が合ってこそ、初めて自立した生活が送れるのです。

歩行指導の仕上げは、銀座を歩きます。
日本でも屈指の繁華街を歩くことで、視覚障害者にとっても、アイメイトにとっても実社会で生活していく上での大きな自信となるのです。
上手に犬をコントロールして、自由に街中を歩く、風を切って歩くことの楽しさを実感することでしょう。

銀座での歩行が終ると、無事卒業、小さな暖かい卒業式です。

視覚障害者は、1ヶ月に渡るアイメイトとの訓練を終え、この日アイメイトと共に帰宅。
アイメイトは自分の目の変わりをしてくれる、たのもしいパートナー、家族の一員でもあります。

アイメイト協会は、単に犬だけを訓練して終わるのではなく、多くの視覚障害者たちが、自由にどこにでも行けるような社会作りをめざしているのです。

その他、アイメイト協会では様々な事業に取り組んでいます。
1人でも多くの視覚障害者が社会参加できるように、優秀な歩行指導員の育成、協会卒業後、アイメイトに対する健康管理や再指導を行うホローアップサービス。そして、PR活動の一貫として一般の人たちの見学会も月に一度開かれています。
協会の活動内容の説明や、訓練中のアイメイトを使っての体験歩行、実際にアイメイトとふれあい、その優れた能力を体感でき、障害者理解を深めてもらう場としても、大きな意味を持っています。

10月10日は、目の愛護デー、そして、アイメイト協会設立の日でもあります。
これを記念して、毎年10月には、アイメイトデーが行われています。
多くの来賓やアイメイト使用者、そして、一般の方々を招いてのこのもようし。
アイメイト協会に関係する方々との親睦をより一掃深めると共に、アイメイトと視覚障害者の社会的な啓発をこめて盛大に行われています。

視覚障害者の易しくたのもしいパートナー、アイメイト。
アイメイトは、視覚障害者の目です。
人間と犬との信頼関係が結ばれているからこそ、職場や家庭などの日常で、視覚障害者が安心して生活できるのです。
さあ、1人と1頭のかっぷるが、今日もまた街に羽ばたいて行きます。

(アイメイト協会・50周年記念ビデオより抜粋
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