アイメイト バーベリーとの出会い
(4)初めの一歩!

ハーネスを、しっかり握って、「GO!」と、力をこめて命令した。すると、バーベリーは、ちら理!と後ろを振り向き早足で歩き出した。私は、何となく体のバランスが崩れ、犬に引っ張られながら、小走りについていった。"速い・速い・・・!'  初めは、2キロメートルくらいのコースだったが、何度か曲がったり、いくつかの横断歩道も渡ったが、何がどうなっていたのか覚えられず、犬について歩く事が精いっぱい。訓練が終わって聞いてみると、今日のコースは、交差点をわたる訓練と、信号の判断をする簡単なコースらしい。"これで簡単? こんな調子では・・・'夜のミーティングが終わり、コースの事を思い出してみたが、何一つ覚えていない。ただ言えることは、田舎で生活している者にとって、あまりにも車の量が多すぎ、音の整理がつけにくい。私は、いままで、信号の判断は犬がしているのかと思っていた。考えてみれば解ることだが、犬は色盲で、そんな事はありえない。"その事は知っていても、盲導犬は特別な犬で、なんでも出来るような気がする"こんな事では・・・'と、最初から落ち込んだ。 

犬との信頼関係が出来てくれば、ハーネスの動き一つで、何をしてどんな事を考えているのか?解るらしい。いまは、とても信じられない。今夜からは、バーベリーと、寝食を共にする事になる。私は、"夜中に、騒ぎだしたらどうしよう'と、犬の寝息に気をつけた。バーベリーは、2・3度寝返りしたが、同じ部屋に、犬がいることなど気がつかないほど静かだった。

協会は、東京の練馬区にあり、一番近い繁華街は吉祥寺だ。吉祥寺までは、二キロメートルくらい離れている。いずれ、繁華街のコースも通るらしい。何がどうなったのか解らないまま、やっと一日が終わった。夜の東京は、眠らないのか?休むことがない。救急車は、ひっきりなしにサイレンを鳴らして通り、暴走族は、けたたましいエンジン音を残して走り過ぎて行く。私は、"やっぱり、田舎が良いなあ'と思った。

眠りにつかない大都市にも、やがて、渦巻くような一日が始まる。私は、ほとんど眠れないままに、ラジオのボリュームをあげた。いくつもの放送局が、我先にとトップニュースをながしていた。何を聞くでもなかったが、しばらくして、隣の部屋で、6時を告げる目ざまし時計が鳴った。"あー、また、1日が始まったんだなあ・・・・'

戻る 次へ メニューへ トップへ