ポッケの中から

天まで届け★★大切なあなたへ・・

久しぶりに、あなたの夢を見ました。
毎年、桜の季節が終わると、あなたの元気だった頃を思い出します。
一気に駆け抜けてしまったあなた、まるで、桜の花のようでした。
あれから、もう30年が過ぎてしまったんですね。
この花の季節の終わりを、一度も忘れたことがなかったのに、今年は、思い出すことができませんでした。
それだけ、私の気持ちが、ずうずうしくなってしまったのかも知れないです。
あの日は、誰もが、あまりにも若くて突然のあなたの旅立ちに・・・。
すみきった空までが、去り行くあなたを惜しむかのようでした。
最後のお別れの時、大きな桜の花びらが棺に舞い落ち、私は、心までえぐり取られたようで、そのまま凍り付いてしまいました。

とてもきれいで、素敵なあなたの、わずか40年の人生を思う度、あまりの寂しさに、我を忘れてしまったことも何度もありました。
あれから3年の後、私は結婚し、二人の子どもにも恵まれ、今は、家族4人と、今年10歳になる盲導犬と暮らしています。
花嫁衣装も、孫の顔も知らないあなた、せめて、今日まで生きていてくれたらなと寂しいです。

そういう私は、もうあなたの年をかなり過ぎてしまいました。
顔が見えない私は、あの頃のあなたの顔を思いだしては、自分の姿を想像しています。
けど、あなたより年を取ってしまったんだなと思うと、ちょっぴり寂しいようで、反面、これまで生きてこられたんだな・・・と思うと、とても複雑な気持ちです。
 それにしても、30年という月日は、早いようでもあり、その寂しさの中で生きてきたことは、本当に長かったような気もしています。
こんな私ですが、あなたが最後にくれたダイアの指輪や、一度も袖を通すことができなかった、うす桃色の着物が似合うような年になりました。

けど、あなたは私が失明したこと、知るはずもないですよね。15年ほど前に全く見えなくなってしまいました。
その当時は、いろいろと大変なこともありましたが、今は、こうして毎日元気で暮らしています。

最後に見た、あの群青色の海に沈んだ夕陽、また、明日が来ることなど考えられませんでしたが、生きている限り、同じ太陽が昇ってくるんですよね。
こうして、人は、さまざまな営みをくり返し、やがて、誰もがみんな土に帰り、永遠の眠りにつくのだと思います。
その日までが、太くて短い人、細くて長い人・・・、決められた運命の中で、今を生きるしかないなと思う、今日この頃です。   2004年 花の終わりの季節より・・・。
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