ポッケの中から

バーベリーがくれた風景

ほら、そっと耳をすませてごらん。
生まれたばかりの鳥たちが、お歌のおけいこしてるよ。
ほら、そっと前を見てごらん。
うす桃色の花びらが、そよ風にまって落ちているよ。
いつもの道、いつもの風景なのに、もう何年も気がつかなかった。
肩に落ちた一枚の花びら、そっと唇におし当ててみる。
もう、こんな季節なんだね。
気がつかないままに、いくつの季節を見送ったのだろうか。
最後に見た、あの群青色の晩秋の海。
今も、同じうなり声を上げているのだろうか。
水平線に沈む夕陽に、そっと手を合わせた日から、もう10年が過ぎた。
家路を急ぐ車のヘッドライトに、自分のわびしさを知った日。
また、太陽が昇ることなど気がつかなかった。

ほら、そっと触ってごらん。
朝露に元気をもらった花たちが、今日もみんなを待ってるよ。
ほら、力いっぱい走ってごらん。
遠くの方から子どもたちの声が近付いてくるよ。
いつもの道、いつもの風景なのに、もう何年も気がつかなかった。
川岸にしゃがみ、ての平で水を救ってみる。
もう、こんな季節なんだね。
気がつかないままに、いくつの季節を見送ったのだろうか。
れんげ畑の中で二人、かけっこしたよね。
お日様の下で、思いっきり水遊びした日。
君は、そっと赤とんぼおいまわし、イチョウの実、たくさん集めたっけ。
木枯らしに震えて歩いたあの道。
君がくれた風景、きっと、きっと忘れない。
いつまでも、いつまでも・・・・・。

ほら、そっと座ってごらん。
こんなに長く、ススキの穂がいっぱいたれてるよ。
ほら、ここに寝転んでごらん。
たくさんの落ち葉のじゅうたん、お庭にきれいだよ。
いつもの道、いつもの風景なのに、もう何年も気がつかなかった。
今の幸せ、永久に続けと願う私。
もう、こんな季節なんだね。
気がつかないままに、いくつの季節を見送ったのだろうか。
君との出会いから、早7年。
ハーネス握って、いろいろなところに出かけられたこと。
私の中に忘れていたたくさんの風景、再び教えてくれて、本当にありがとう。
ほほから落ちたいくつもの涙、そっとなめてくれたこと、きっと、きっと忘れないよ。
いつまでも・・・・。
君がくれた風景、きっときっと忘れないよ。
いつまでも、いつまでも・・・・・。

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