H君からのメール

 長年学校での講演会をさせてもらっていると、講演会の後でいろいろなメールが来る。大半は悩みや苦しみを抱えている中学生や高校生だが、たまに小学生から可愛いメールが届くこともある。

その中で、以前講演会に行かせてもらっていた高校の生徒で、みんなの感想文とは別にメールで来た感想を紹介しようと思う。

皆の前で感想文を読んで録音するというのは、どうしてもそつのない一般的な感想になり、本当の気持ちが言えないでいる生徒たちも多いのではないかと思う。その生徒は高3年の男子生徒であまりまじめとはいえない学校生活を送っている生徒からだった。本人に了解を取っているので、全文紹介する。彼はH君と言い、両親は離婚して母と一緒に暮らしている。

H君からのメール

 僕は先日アウリンさん(本当は本名)の講演会があると聞いて、また暗くてつまらない話を聞かされるのかと思うと嫌気が差していたけど、「こんにちは」という元気な声に、「何、このおばさん!!。」と最初から驚いた。

人権講演会と聞くと、小難しい話を退屈しながら聴くのが今までだったけど、今日の話は全て納得ができる話だった。

 話の中で僕が印象に残りまたなるほどなと思ったことが3つあった。まず、きれいごとでは生きてはいけないから現実と向き合うということ。次に悩むということは決して悪いことではなくて、今より少しでも良くしたい、良くなりたいと思う気持ち。けど、悩んでいるときに決して結論付けないこと。

そして、どんな小さなことでもいいから夢や目的をもち、それに向かって頑張れた自分を知り、次のステップを作ろうということ。それと、思い出は決して壊れないということ。

 それぞれに明確な理由がつけられていて、僕は心の中がクリーンアップされた感じがした。目が見えない人は暗くておとなしい生活をしていると思っていたし、夢や希望など持っているはずがないと思っていた。

 それとアウリンさんの生き方を知り、僕も見習いたいなと思った。それは「志は高く情には熱く、そして人生今を生きる。」と言うこと。この短い言葉の中に全てが凝縮されているように感じた。僕は両親が離婚して道をはずしたこともあり、今も決してまじめな学生とは言えないけど、今日のアウリンさんの話を聞いて、自分自身が小さく感じたし、つまらないことに肩肘を張っていたんだなと気がついた。

 そう感じたのは、決して僕だけではないと思う。いつもの講演会とは違い、私語もなくみんなまじめに聞いていた。誰もが、自分と言うものを考えていたのだろうと思う。90分という時間の中で、自分の中で何かが変わった。そう思う自然体の話の内容だった。

僕は国語が苦手だから上手くは表現できないけど、今まで先生たちのテクニックやマニュアルどおりの勉強で説得させられてきたけど、今日の話は全部自分で納得ができたし、もっともっといろいろな考えや経験を聞きたいとさえ思った。これからは母を思いやり、自分と向き合って生きたいと思う。アウリンさん、今日は自分と向き合うチャンスやヒントをくれてありがとう。Hより。

メニューへ トップへ