バーベリーがくれた風景

ほら そっと耳をすませてごらん

生まれたばかりの鳥たちが お歌のおけいこしてるよ

ほら そっと前を見てごらん

うす桃色の花びらが そよ風にまってるよ

いつもの道 いつもの風景なのに

もう 何年も気がつかなかった

肩に落ちた一枚の花びら そっと唇におし当ててみる

もう こんな季節なんだね

気がつかないままに いくつの季節を見送ったのだろうか

最後に見た あの群青色の海

今も 同じうなり声を上げているのだろうか

水平線に沈む夕陽に そっと手を合わせた日から早20年

家路を急ぐ車のヘッドライトに 自分のわびしさを知った日

また 太陽が昇ることなど気がつかなかった

ほら そっと触ってごらん

朝露に元気をもらった花たちが 今日もみんなを待ってるよ

ほら 力いっぱい走ってごらん

遠くの方から 子どもたちの声が近付いてくるよ

いつもの道 いつもの風景なのに

もう 何年も気がつかなかった

川岸にしゃがみ ての平で水を救ってみた

もう こんな季節なんだね

気がつかないままに いくつの季節を見送ったのだろうか

れんげ畑の中で二人 かけっこしたよね

お日様の下で 思いっきり水遊びした日

君は そっと赤とんぼ追い回し

イチョウの実 たくさん集めたっけ

木枯らしに震えて 歩いたあの道

君がくれた風景きっときっと忘れない

ほら そっと座ってごらん

こんなにいっぱい ススキの穂が垂れてるよ

ほら ここに寝転んでごらん

たくさんの 落ち葉のじゅうたん お庭にきれいだよ

いつもの道 いつもの風景なのに

もう 何年も気がつかなかった

今の幸せ 永久に続けと願う私

もう こんな季節なんだね

気がつかないままに いくつの季節を見送ったのだろうか

君との出会いから 10年の間

ハーネス握り いろいろなところに出かけられたこと

忘れていた たくさんの風景

また教えてくれて 本当にありがとう

ほほから落ちた いくつもの涙

そっとそっと なめてくれたこと

きっと きっと忘れないよ

君がくれた たくさんの風景

きっと きっと忘れないよ

いつまでも いつまでも

きっと きっと忘れないよ

いつまでも いつまでも

*バーベリーと言うのは、私の初代のアイメイト(盲導犬)です。彼女とは10年一緒に暮らしました。12歳で心筋症で突然死するまで、失明して忘れていたことをたくさん思い出させてくれました。そして、子どものように可愛いパートナーと共に暮らした10年間は、とても充実し幸せでした。今は2代目のアイメイトと暮らしています。彼女もまた、私に多くの幸せをくれています。

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