女性に多い病気
子宮内膜症と子宮筋腫


 病気の話に入る前に、子宮について少しお話します。
子宮は、腹部の下の中央にあり、卵くらいの大きさです。
下になる子宮口の部分を子宮頚部、その後ろの部分を子宮体部と言い、膣の1番頂上にあります。
子宮は、もともと、子どもを作るためにできた臓器ですから、全てそのための機能を持っており、毎月1度妊娠の準備をし、その機会がないときは、月経と言う形で外に出てしまいます。

 子宮の病気には、細菌感染による炎症や、腫瘍、奇形の3つに分けられ、その他に、子宮の位置異常などがあります。
その中で、1番重要視されているのは、炎症と腫瘍です。
 最近は、性交渉による炎症が非常に増えていますが、今回は、子宮内膜症と、子宮筋腫の話です。
これらの病気は、30年ほど前までは、そんなに多い病気ではありませんでしたが、環境ホルモンや、食事の変化なども原因の一つと考えられています。
子宮の内膜は、妊娠しない限り、毎月1回、月経として出てしまいますが、内膜が、子宮の中だけにあれば問題はありませんが、子宮以外の場所にできてしまったり、子宮の近くの所では、自然に子宮内膜に変わってしまうことがあり、これを、仮性と言います。

 子宮の外に子宮内膜ができてしまうので、毎月1回、そこでも月経が起き、内出血と言う形になります。
1番多い場所は、子宮のすぐうしろでダグラス窩と言うところです。
 なぜこのような事が起きるかですが、発生の時に、腹膜が徐々に変化して、子宮になる前のミューラー氏管を作って、そのミューラー氏管が子宮になるものですから、その細胞の性質上、どの細胞にも、どんな細胞にもなりうるのです。
ですから、子宮周囲の細胞は、子宮に似た組織を作りやすいのです。

 子宮内膜症には、子宮の中の膜が、すぐ隣の子宮の筋肉の中に入り込んでしまう内性子宮内膜症と、腹腔内にある懐性内膜症があります。
内性子宮内膜症の場合は痛みを伴いますが、懐性内膜症の場合は、痛みは大したことはありませんが、その後に、血液が漏れて癒着が起きることがあり、癒着が起きると、腸が運動するときに痛みが出ることがありますし、炎症を伴うこともあります。
また、ダグラス窩に病巣があると、性交時に圧痛が起きることもあります。
子宮内膜症は、受精卵が着床できにくいため、不妊の原因にもなります。

 子宮内膜症になりやすい年齢層は、30代とされていますが、それより若くても、症状が軽い、病院に行くのが恥ずかしいなどの理由で、発見が遅れるだけのことで20代でも起きていることもあります。
10代の月経痛は、内膜症でないことが多いですが、20代になってくると内膜症の可能性が高くなってきますので、月経痛のひどい人は、検査を受けることをお勧めします。
検査の方法で、1番大事なのは内診ですが、その他にも、超音波やCTスキャン、MRI、それから、採血して血液を調べる方法もあります。
 血液検査では、子宮内膜症になると、血液中に、CA125と言う特殊な物質が増えてきますので、確定診断とまではいきませんが、ある程度の診断はできます。
正確に、診断するには、やはり、超音波やCTスキャン、MRIなどで行なうと、病巣の位置までも正確に調べることができます。
 治療法には、薬物療法と手術がありますが、薬物療法では完治することはできません。
手術は、腹部に1センチほどの穴を3ヶ所開け、内視鏡で手術を行なう方法もありますので、数日の入院ですみます。

 次に、子宮筋腫についてです。
これも非常に多く、症状の現れていないものを含むと、20〜30パーセントの女性にあると言われています。
子宮筋腫は、子宮のいろいろな場所にでき、その大きさも様々で、1センチくらいのものから、大きいものでは幼児の頭くらいのものもあります。
重さで言うと、子宮の20〜30倍にもなります。
 できる場所は、子宮の内膜に近いところにできるもの、あるいは、子宮の筋肉の中にできるものや、子宮の外側にできるものなどがあります。
できる場所によって、症状も違い子宮の内側にできるものは、月経以外にも不正出血として出血することがあり、月経時には、非常に多量の出血があります。
そして、不妊症にもなりやすいです。
 また、筋層の中にできるものは、月経時には、子宮が収縮しようとするため、グーッと張ってくるような痛みがあるのが特長ですし、疲れてくると、子宮は収縮しますので、夕方から寝る時間帯にかけて張ってくるような人には、このタイプの筋腫があることが多いです。

 子宮の外側にできるものは、かなり大きくなっても、あまり症状がないのが特長です。
しかし、できる所が細くて、その先に大きな筋腫がある場合などは、細い部分がねじれて痛みが出る場合があります。
また、他の臓器や血管を圧迫し、それが大きな病気に繋がることもあります。
 子宮内膜症の痛みは持続した痛みですが、子宮筋腫の痛みは周期的な痛みですので、自分でも、ある程度は区別ができます。
特に、注意しなければならないことは、子宮内膜症も、子宮筋腫の場合も悪性に変わることがあります。
子宮内膜症の場合は、癌化することもありますので、40歳を過ぎた人は検査をした方が良いと思います。
子宮筋腫の場合は、癌にはなりませんが、肉腫と言う悪性腫瘍に変わる場合があります。
この場合は、急激に大きくなりますので、月に1回くらいの検査を受けている方、が安心できると思います。

 次に、子宮筋腫の治療と検査についてです。
筋腫は10センチくらいの大きさになると、自分で触って分かるようになりますが、少し太ったかなと思うくらいで、気がつかない場合もあります。
検査は、問診で始まり、次に診察をしますが、内診が非常に大事です。
内診によって、大きさや形、硬さなどから判断します。
また、その部分を押すと、圧痛を示す人もいます。

 その後、超音波を使って更に精度の高い検査で詳しく調べます。
その他、月経時に多量の出血がある人は、貧血を起こしている場合もありますので血液の濃さを調べます。
 薬物による治療は、卵巣の働きを止めて、月経を停止させます。
これにより、子宮筋腫は約半分〜3分の1ほどに小さくなります。
これにより、症状も軽くなり、貧血なども改善されてきますし、妊娠も可能です。

 その他の治療法は手術と言うことになりますが、膣から、内視鏡を使って子宮の中の筋腫を取るという方法もありますし、開腹手術によって、筋腫だけを取ると言う方法、それから、子宮全体を取ってしまう方法があります。
現在では、できるだけ子宮を残すと言う方法をとっており、相当悪性になっているか、手遅れの状態でない限り全部を取ることは少ないです。



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