病気の予防
丈夫な歯で体も元気


丈夫な歯で体も元気に(その1)

 よくかむこと、しっかり話すこと、そして、食いしばることなど、歯に関わる様々な行為は、どれも全身の健康に繋がっていると言われています。
そこで、今回は、いつまでも元気で暮らすために、大切な歯の役割と健やかな体の関係についてお話しします。
歯の健康なお年寄りは、心身ともに元気な人が多いと言われています。
歯が健康だと、食べる物もおいしく、よく噛めるので食べ物の制限も少ないのです。
そのため、栄養が取れるばかりでなく、心の問題も含めて、よく話す、よく笑うと言うようなことが、健康を維持するために重要なことだと言われるようになりました。

 、ぼけ防止のために手先を使うのが重要だと言われていますが、もちろん手先を動かすことも大切なことですが、そのほかにも、いろいろな重要なことが多くあります。
やはり、食べるとか、しゃべるなどの基本的な生活習慣が壊れてしまうと、体の中にいろいろな障害が起こってきます。
歯が悪くて、しっかりと噛むことができないと、歯ごたえのある物はけいえんしがちになり、ビタミン摂取に偏りが起きるということがあります。
その原因の1つは、生野菜が食べられないので、どうしても、ゆでたり煮たりした物を好むようになります。
そうなれば、熱に破壊されるビタミンが、常に摂取不足になります。

 また、年を取って歯が失われると、これまでのように、上手に話しができなくなり、それを回復する医療を提供しないと、きちんとしたコニュミケーションがとれないのです。
年を取っても話しをすると言うことは、とても大事なことですから、歯の疾患を含めて総合的に考える必要がありますし、丈夫な歯で噛むこと話すことで、栄養が行き渡り、脳も活発になりまし。


丈夫な歯で体も元気に(その2)

 2回目の今回は、どの世代にもある歯のトラブル、虫歯の話しからです。
虫歯という言葉は、ほとんどの人が知っていると思いますが、では、改めてその原因を聞くと、それもまた、大半の人は答えられないことが多いです。
虫歯の原因菌が発見されたのは、30年以上前になります。
人に移る病気を、伝染病とか、感染症と言い、移る条件には必ず3つの条件が揃わないと移らないのです。

 その条件とは、感染源があること、次に感染経路があること、それを受け入れる宿主(しゅくしゅ)つまり、受け入れる人がいると言うことです。
このどれか1つが欠けても感染することはないのです。
虫歯の場合も、感染症の1つですから、最初から、自分の歯に湧いてくる分けではなく、どこかに虫歯菌があったのが、ある経路を伝わって入ってきたものです。
その虫歯菌が、最初はどこにあって、どんな経路で伝わったのかが、やっと最近分かってきました。

 それによると、親の世代から子どもの世代に、唾液をかえして感染して行くということが分かってきました。
通常は、お母さんの口の中にいる虫歯菌が、口移しであげる食べ物や、1度お母さんの口の中で柔らかくした物を箸で与えたりすることで移ることが多いのです。
治療法は、悪くなった歯は削って詰めるという対処療法も必要なのですが、最近では、原因療法といって、虫歯菌をどうコントロールするかという、原因療法に対しても対応できるようになってきました。

 ですから、最初はお母さんの口の中にいる虫歯菌を処理することが必要なのです。
そして、その経路を絶つと言う意味でも、1度お母さんの口の中に入れた物は絶対に子ともにあげない、また、お母さんの口の中に入れた箸で摘まんだ食べ物をあげないなどの注意も必要ですし、もしそのようなことがあっても、子どもの口の中に糖分があると、更に感染力が強くなるのです。

 ですから、子ども達が、甘いお菓子をだらだらと、いつも食べているのは病めさせることが大切ですし、食べた後は、口の中をきれいにし、フッカ物を使って歯を強くすることが大事です。
これを守っていれば、かなり虫歯の予防ができるのです。
その他にも、虫歯の予防には唾液も関係しており、基本的には常に歯と唾液が接触していると、虫歯にはならないのです。

 ところが、虫歯菌が糖分を返して、歯と唾液の接触を妨害してしまうのですが、それを、バイオフィルムといいます。
バイオフィルムができることによって、唾液の力が働かなくなってしまうのです。
また、年を取ってくると、唾液の量が少なくなって来ますが、特に、降圧剤や、抗鬱剤を飲んでいる人は、唾液の分泌が少なくなって、虫歯になりやすいと言われます。


丈夫な歯で体も元気に(その3)

 今回は、寝たきりになっても、丈夫な歯でいられるようにというお話です。
寝たきりになると、歯の手入れがなかなかうまく行かなくなってしまいますが、口の中には、何百個もの細菌がいて、その中には、炎症を起こす細菌も多いです。
歯を磨かないと、そう言った細菌が活動して、寝ている間に自然に肺の中に入り、気道感染症や肺炎などになってしまうこともあります。
ですから、いつも口の中をきれいにして、口の中で悪い細菌が増殖しないように気をつけることが大切です。

 体の中で、1番多くの細菌が増殖しているのは口の中で、口の中のコントロールを怠ると、体中にいろいろな細菌が繁殖することになります。
そして、それが、発熱やもっと深刻な事態に発展することもあるのです。
年を取ると、入れ歯をしている人が多いですが、入れ歯は、細菌の住処としてかっこうの場所ですから、口の中を、いつも清潔にしておけば、入れ歯問題はないのですが、不衛生にしておくと、通常では増殖しないような細菌まで増えてしまいます。
80歳になっても、自分の歯を20本残しておこうと言われるようになって久しいですが、それが、実現されているのは都市部で約1割だけで、農村部になると、ずっと低くなっています。

 その正確な原因は不明ですが、歯に対する考え方の違いや、歯医者に通う時間の違いなどの社会的な問題もあるのかも知れません。
都市部では、人と人とのコニュミケーションが重要視されることが多いですから、歯に対する意識が高く、しゃべったり、笑ったり、食べたりなど、普通に出来ないと暮らしにくいとも言われているのです。


丈夫な歯で体も元気に(その4)

 誰もが、歯を治療するのは大事なことだと思っていると思いますし、いつまでも自分の歯で食べたいと思ってるのではないかと思います。
しかし、歯医者さんで歯を削るあの独特の音が苦手などの理由で、なかなか治療に踏み切れないことも多いのではないかと思いますが、昔は、歯が悪くなってから歯医者さんに行くことが多かったのに対して、最近では、定期検診を受ける時代に変わってきました。

 これは、日本だけではなく、予防医学と言う観点から世界的な傾向になってきており、歯科衛生士に歯を診てもらって、病気になっていないかどうかをシェックしてもらう人が増えています。
しかし、そのために、わざわざ遠くの歯医者さんに行く必要はなく、近所の歯医者さんでも、歯科衛生士の人がいれば大丈夫です。
歯医者さんで、大事な点というのは、次のアポイントをきちんと取ってくれることで、「悪くなってから来てください」というような歯医者さんではだめです。

 これからの時代は、歯科衛生士の存在が重要で、歯をクリーニングして行くことによって、虫歯や歯周病を予防することができ、そのような歯科衛生士のいる所なら、安心です。
統計によると、日本人の30歳代の人の約8割が歯周病になっていると言うことですが、これには驚きです。
歯周病が発祥するまでには、20年ほどの期間がかかりますので、中学生頃から、きちんとした予防法や知識が必要です。

 日本では、この部分がおろそかになっていることが多いですから、30代で歯周病になることが多いのです。
それに対して、先進国では、子供の頃から必ずウォーターピックやデンタルフロスを使っています。
日本人の場合は、ケアーに対する意識や比率が低く、日本の家庭でも、もっと取上げてほしいものです。


丈夫な歯で体も元気に(最終回)

 前回も少し触れましたが、歯の健康を保つには、やはり、セルフケアーが大切です。
それをやらないで、歯の健康を望むのは不可能です。
現在、歯を磨くのに1番多く用いられているのが歯ブラシだと思いますが、その歯ブラシにもいろいろな種類があり、磨き方も年齢によって異なります。
子ども時代には、虫歯予防のための磨き方をしなければなりませんが、大人になると、今度は歯周病予防のための磨き方に換えなければなりません。

 そうすると、歯ブラシの性質や形状も子どもと大人では違います。
年齢や個人に応じた正しい磨き方を教えてもらうことが大切です。
 そして、歯磨きにかける時間ですが、2〜3分という人が大半で、10分以上かけて磨いている人はほんの一握りです。
臨床をやっている先生や、歯科衛生士に聞くと、プロでも1時間くらいかけないと、なかなか完全には歯石や汚れを落とすことはできないと言います。
ですから、家庭で毎日磨くときでも、30分くらいはかけないと、しっかり磨けないのではないかと思います。

 また、歯を守るには、食生活の見直しも関係してきます。
例えば、リンゴを1個よく噛んで食べると、下手な歯磨きよりも歯がきれいになるといわれますし、繊維性の食べ物を食べていると、その食べているということによって、物理的に歯の表面が洗われます。
このようなことから、寝たきりで、口から物を食べないと逆に口の中が汚くなるのです。
 食べるという刺激によって、唾液が分泌され、味覚刺激によって唾液が出ます。
その唾液が、天然の洗効剤の働きをして、口の中をきれいにしているということもありますので、リラックスして、おいしく味わいながらよく噛んで食べることも大切です。
そして、その食べる物は、繊維性の多く含まれている物を食べることによって、口の中はどんどんきれいになって行きます。



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