痛風という病気は、第2次世界大戦前と戦争中には、日本では見られない病気でした。
その当時は、日本人は痛風になりにくい体質を持っているのではないかとさえ言われていました。
それほど日本では、少ない病気だったのです。
ところが、戦後、生活が急速に豊かになり、食生活も欧米化して、アルコール摂取量も増えてきました。
それに伴って、高尿酸血症、痛風の人がどんどん増えてきています。
昔から、痛風は贅沢病と言われ、王侯貴族、例えば、アレキサンダー大王が、痛風だった、ルイ13世がそうだったなどと言う話まであるくらいです。
それが、現在では、わが国も生活や食生活が豊かになり、誰でもこの病気にかかる可能性を持っている病気と言えます。
考えられる原因として、肉食が多くなってきたこと。
特に、モツ類が非常に尿酸の元を多く含んでいるのです。
それと、アルコールも尿酸値を上げますので、モツを食べながら酒を飲むと尿酸値を、グングン上げることになります。
尿酸は、細胞の核の中にある、プリン塩基と言う物質が、代謝されて出てくると、尿酸物質になります。
普通は、腎臓から尿と一緒に廃泄されますが、暴飲暴食の代謝で出てくる量がやたら多ければ、腎臓の処理能力が追いつかなくなります。
また、腎臓の機能が悪いと、食べる量が少し増えただけでも、尿酸値はすぐに上がってしまいます。
痛風は、病名のように、風が触っても痛いと言うほど、とても痛い病気です。
尿酸、または、尿酸塩物質は、非常に溶けにくい物質で、この溶けにくくなった物質が、結晶化して関節の中に析出してくると、烈しい関節炎を起こします。
ある日、突然やって来る痛みですから、それは大変です。
その痛みは、1番多いのが足の親指の関節に来る物で、70〜90パーセントだそうです。
最初は、その烈しい痛みも1週間ほどで治ってしまいます。
そして、しばらく再発しません。
これが、痛風の一つの特長ですが、治った訳ではなく、数ヶ月もすると、再び激痛がやってきます。
そのままにしておくと、次にやってくる激痛までの間隔が、だんだん短くなってきます。
そして、重傷となります。
痛風は、激痛の他に、骨が壊れて指が変形したり、皮下結節(ひかけっせつ)と言って、中に尿酸の入ったコブができたりします。
また、腎臓に沈着したり、尿路結石を起こしたりなど様々な全身障害を起こしてきます。
この病気は、相当悪くならないと症状が現れませんから、その間に腎臓などの機能が衰えてくると、それに伴って、高血圧が出てきたり、動脈硬化が進行するなど、相俟、更に、腎臓を悪くしてしまいます。
結果、痛風の患者で、何人かが腎臓の機能が全くなくなって、人工腎臓と言われる人工透析の治療を受けることになります。
最初の痛みは1週間ほどで治ってしまいますから、その痛みがない内に治療を受けるのが大事なことです。
尿酸は溶けにくい物質だと言いましたが、尿酸値は、血液検査でもすぐ分かります。
尿酸が血液中に、6.4ミリグラム、パーデシリットルほどになると、飽和状態で限界の状態です。
ところが、人間の血液は、わりと、色々な能力があって、少し余分になった尿酸は、蛋白と結合したり、無理やり溶かす力がありますから、尿酸値が6.4になったら、すぐに痛風が起こってくることは少ないです。
だいたい、高尿酸血症、すなわち、血液中に尿酸が過剰であると言う数値は7.0と言われています。
この尿酸値は、努力によって下げることが可能です。
食生活で、尿酸が多く含まれる物を減らしてみたり、アルコールの量を減らしたりすることによって、かなり下がります。
また、肥満傾向にあれば、体重をコントロールすることによっても、尿酸値が違ってきます。
痛風の治療は、痛みのある内は大変ですから、消炎鎮痛薬を使って行なうか、痛みが収まってから行ないます。
もともと、尿酸が高くなりやすい体質の方がいて、そう言う方が、高尿酸血症になり、そして、痛風になるわけですから、薬をやめると再び尿酸値が上がり、同じことを繰り返すと言うことになりますので、よほど体質が変わったりしない限り、長期間薬を飲むことになります。
その薬には、2種類あり、体の中で尿酸を作らせないようにする薬と、尿中に廃泄を良くしてやり、体の中の尿酸を少なくしてやる薬があります。
薬は、その原因によって使い分けます。
痛風の治療や予防には、薬のお世話になるのも仕方がありませんが、食生活の改善などで体質を改善するのも方法の一つで、肉類を少なくしたり、野菜を多くしてみたり、また、運動量を増やして、体重を整えるなどです。
痛風になる人は、95パーセントが男性で、特に、青壮年期の男性に起こる病気だと言われています。
最近、その研究が進んできて分かったのですが、女性ホルモンが、尿酸を腎臓から廃泄する機能を非常に良くする働きがあると言うことです。
ですから、女性は、少々尿酸の多い食べ物を食べても、あまり尿酸値が上がらないと言うことです。
しかし、閉経期以後、女性ホルモンの分泌が低下してくると、やはり、尿酸値がだんだん上がってきて、次第に男性に近付くと言われていますので、女性の場合で、高尿酸血症や痛風になる方は、ほとんどが閉経期以後に起こってくると言われています。