放射線科は、一般には、あまり馴染みがなく、むしろ、レントゲン科のようなX線科の方が知られているのではないかと思います。
放射線は、X線だけでなく、γ線、α線、β線など、いろいろ放射能を持った放射線があり、このようなものを診療に使っている診療科です。
今までは、X線を使って骨の写真を撮っていましたが、その他に、γ線を使った診断や治療が行なわれています。
このように、放射線科では診断、治療、それに、核医学の3つの診療科が含まれています。
放射線は、同位元素から出る放射能で、その同位元素を特殊な同位元素と組み合わせて、人体の目的の臓器に集まるようなものを内服、注射することによって、その臓器から、放射線が出るようになります。
それを外からカメラで撮って、その写真を見て臓器の診断ができると言うものです。
例えば、甲状腺は、ヨードが沢山集まる場所ですから、ヨードの放射線を帯びた要素を微量に患者に飲んでもらい、カメラで写真を撮ると甲状腺がきれいに写るのです。
画像で診断すると言う意味では、これは放射線ではありませんが、MRIがあります。
これは、電磁波を利用して体の中の水素が出す信号をキャッチして、それをコンピュータで処理した画像を使って診断するものです。
その他にも、超音波(ちょうおんぱ)を利用した画像診断もあります。
我々の耳に聞こえる音は、16HZか〜20000HZくらいですが、さらに高い周波数の音波、10万ヘルツくらいの超音波を使って、臓器から反射してくる超音波を受信し、それによって、画像をブラウン管の上に描かせるものです。
この2つは、放射線を使っていませんが、画像診断と言う意味から放射線科で扱うことになっています。
この画像診断は、何よりも経験が頼りになります。
放射線科で行なう治療には、主に癌の治療があります。
放射線科の技士が照射する位置を正確に決め、医者が照射量を決めて指示します。
次に、放射線科における胸部の診断と治療についてお話しします。
胸部には、肺や 心臓があり、その外側には肋骨があります。
胸部をX線で撮影すると、白や黒、灰色に写る部分があります。
X線は、直進するのですが、物体を通過する性質もあります。
しかし、全ての物体を同じように通過するのではなく、その物体を構なしている材質や厚さによって、通過度が異なってきます。
骨などのように、密度の高く堅い物質は通過しにくく、肺のように中に空気が入っているような臓器は、1番通過仕やすいのです。
そして、心臓や 血管のような臓器は、その中間的な通過度になります。
X線写真を見ると分かるように、骨の部分が最も白く写り、肺の部分が最も黒っぽく写ります。
そして、心臓や血管は灰色っぽい白に写ります。
そのX線写真を見て、肺癌であるのか、肺結核なのかなどの診断をします。
肺癌や胸部にできた悪性腫瘍も、放射線を使って治療をしますが、もう1つ、血管の中にパイプを通して、心臓の中や肺の細かい部分を調べ、悪い部分に造影剤を注入し、外から写真を撮ったり、あるいは、直接その部に治療薬を入れたりします。
このような治療も、放射線科で行いますが、胸部だけでなく、全身の至る所に行なわれます。
次に、腹部の診断と治療についてです。
腹部には、中が中空の管空臓器と呼ばれる、食道や胃、腸などと、肝臓や膵臓、腎臓などのように、中が詰まった臓器の実質臓器があります。
主にこの2種類の臓器は、それぞれ検査方法も異なります。
胃の検査や腸の検査は、バリュウムを飲んでX線で撮影して検査をします。
また、肝臓や腎臓のような実質臓器の検査は、超音波(ちょうおんぱ)を使って検査を行ないます。
バリュウムを飲んだ後、発泡剤を飲んで胃を膨らませ、胃の内側にバリュウムの壁を作ると、胃の細かい部分の検査も可能になります。
この検査法は、日本のお家芸とも言える方法です。
最後に、頭部の診断と治療についてです。
従来の方法は、X線だけが診断の頼りでした。
ところが、頭部はほとんどが骨で包まれているため、内部をX線で写真を撮ることができず、せいぜい頭の骨の骨折くらいしか診断ができませんでした。
脳の診断ができるようになったのは、CTスキャンやMRIが発明されてからです。
CTが先にでき、頭の中を輪切りの状態で診断できると言う画期的な方法です。
CTは、コンピュータトモグラフィーの略で、人間の体を輪切りの状態にした画像が得られるものです。
その後にできたMRIは、もっと細かく縦や横の切断面を画像化することのできる方法ですが、強力な磁力を使用しているため、骨折を金属で固定したり、心臓のペースメーカーを使っている人には不向きです。
そして、今までできなかった、目の奥の視神経や動眼筋なども、簡単に診断できるようになったのもCTやMRIのおかげです。