脳と心臓の病気
主な心臓病の症状


 心臓病については、他でも述べましたが、今回は、主に心臓病に関する症状のお話です。
心臓の病気には、狭心症や心筋梗塞などに代表される虚血性心疾患があります。
その他には、心臓の弁が侵される弁膜症、心臓の筋肉自体が侵される真菌症などがあります。
心臓そのものは、非常に丈夫なもので、1日10万回も鼓動して、何十年も休む事なく働いています。

 虚血性心疾患の狭心症や、心筋梗塞のメカニズムは、心臓を取り囲む冠状動脈の内側が細くなってしまうために、血行障害を起こすと言うのが原因です。
ほとんどの場合、加齢と言って年の性にしてしまうのですが、心臓の血管の老化は、他の動脈に比べ約10年も老化が早く始まると言われています。
そして、このような病気は、40〜50代の人に起こりやすいのです。
 年を重ねるに従って、血管の内側は細くなって行くのです。
動脈硬化症の初期には、血管全体が細くなるのに抵抗して血管が拡がってきます。
血流が少なくなるのを補うために拡がり、これを血管の代償的な拡大と言います。

 ところが、一部の人には局所的、特に、細くなる事があり、それが心臓に起これば狭心症や心筋梗塞になります。
意外な事に、20〜30代の若い間の生活習慣が問題で、喫煙や飲酒、動物性食品中心の食生活の積み重ねが血管を細くする大きな原因と言われています。
 その中で、ほとんどの病気に出てくるのがコレステロールです。
コレステロールの血中濃度が高い場合は、それだけ動脈硬化症になりやすいと言われています。
そして、若い人の動脈硬化は心臓に起こりやすいのです。

 動脈硬化は、女性より男性の方が10年ほど進行が早いと言われますが、女性でも、タバコを吸う上にコレステロールの血中濃度が高く、肥満のある場合は、男性なみに心臓病になる可能性があります。
また、若年層の心筋梗塞に、ヘビースモーカーの方が多いのも見逃せない事実ですし、虚血性心疾患にはストレスも十分関与されると言われています。

 最初は、狭心症についてですが、狭心症は、心臓を取り囲んでいる冠状動脈の内膜が動脈硬化によって肥厚を起こし、その結果、冠状動脈の内側が細くなり、それで血行障害を起こし、胸が痛くなる病気です。
症状は、軽微なものから、非常に激烈な痛みまでありますが、当初は、それほど激烈ではなく、歩いている時なら少し休憩を取ると治まる程度です。
その時の症状として、胸焼けのような胸に何かが詰まったような感じがしたり、あるいは、左肩が重たいとか、歯が浮くような感じなど様々な症状を呈します。
このようなものを放散痛と言い、初期の症状としては、ほとんどがこのような感じです。

 ですから、本人は別の原因を考えてしまうのです。
これが、さらに進行すると、胸の真ん中が痛くなったり、圧迫されるような、胸焼けのような、詰まって来るような感じが起きてきます。
これも、安静を保つ事により、まもなく治まります。
 狭心症の症状には、これまで述べたような労動作業によって、血圧が高くなる、脈拍が早くなる事で起こる労作性の狭心症と、もう1つは、安静時狭心症と言って、何もしていない、特に、早朝に胸が詰まってくると言う事もありますし、人によっては、会議中に胸が詰まってくると言うような所見の安静時狭心症があります。
もちろん、その混合型もあります。

 狭心症の治療は、特効薬としてニトロールやニトログリセリンがあります。
これは、症状が軽い場合に用いますが、症状の重い場合には、冠動脈形成術と言って、冠状動脈の細くなっている部分に特殊な風船を入れて、その血管を拡げる治療法を行ないます。
これをPTC、あるいは、風船療法と呼んでいます。
成功率は、97〜98パーセントもあり、これによって、心筋梗塞になるなどの危険性は約1パーセント程度で、ほとんど問題はありません。

 次は、心筋梗塞ですが、この病気は、非常に激烈な痛み、油汗を伴うような痛みを起こします。
原因は、心臓の冠状動脈の閉塞によって起こります。
狭心症は、冠状動脈が塞がる直前までの狭窄によって起こりますが、心筋梗塞は、冠状動脈の閉塞によって起きます。
 心筋梗塞の発症は突然起きることが多いですが、全て突然と言うわけではなく、3分の1ほどは何らかの前兆があります。
それは、2〜3週間前から、今までに経験をした事のないような胸の圧迫感が少しずつ起きてくると言うのが、1つの前兆です。
それが重なって、ある日、突然発作がくるのです。

 普段、行なっているような健康診断で見つけるのは、ほとんど無理なことで、心筋梗塞に将来なるかも知れないと言う注意する次項に、高血圧があるかとか、糖尿病があるか、尿酸値が高い、あるいは、コレステロールが高いと言うような危険因子を、どれほど持っているかが重要なポイントになってきます。
心筋梗塞の中で、困った事に狭心症と同じように軽い痛みがあっても、少しすると痛みが治まる事があります。
次に痛みがきた時も、すぐに治まるだろうと思って我慢している内に、心臓のダメージは、どんどん広がって大変な事になってしまいます。
とにかく、発作が起きたらすぐに救急車を呼ぶことが大事です。

 心筋梗塞による圧迫感は、最初は胸の中央に起きることが多いですが、その内、胸全体が痛むように堅くなり、ギューッーと圧迫されるような経験した事のない痛みが起きてきますから、これで、自分も最後かと思うくらいだそうです。
救急車で病院に運ばれると、CCU(集中管理室)に収容されます。
ここで、しかるべき処置をして心臓カテーテル検査室に行き、どこの血管が、どの程度詰まっているかをチェックします。
これは、緊急に冠動脈造影を行なうわけです。
そして、詰まっている場所を確認した後に、速やかに風船を入れて拡張し、閉塞している血管を再び開通させると言う方法を取ります。
これに要する時間は、ベテランの内科医が行なえば、大体1〜2時間程度だと言われています。

 この場合の成功率も、狭心症と同じように95パーセント以上です。
しかし、わずかですが、中には風船でもうまく行かない場合もあります。
そのような時には、マステントと言って、金属の網のようなものを入れて固定します。
それによって、閉塞した血管を開通させる事が可能です。
ですから、少しでも早くしかるべく処置を受けると、心筋梗塞でも、今ではそんなに怖い病気ではありませんし、心筋梗塞での死亡率は、現在では5パーセント以下の病気になってきています。

最後に、心臓の病気全般の予防法についてです。
皆さんもよくご存知のように、食生活が欧米化し、脂肪や肉類をとるようになり、それが原因の1つとして心臓病が増えています。
過去の死亡率のトップは脳卒中でしたが、癌がトップになり、次に心臓病、脳卒中は第3位になりました。
 元もと、男性は女性に比べて、狭心症や心筋梗塞になりやすい因子を持っていますが、それにプラスして、大きな要因は食事です。
コレステロール、アブラ分の多い食品を選ぶとか、喫煙、アルコールを多量に摂取するなどが関係してきます。
ですから、予防すると言う事は、原因を排除すると言う事になります。

 これまで、胸の痛みについて述べましたが、痛みの表現には、人によって多種多様です。
次のような痛みは、狭心症や心筋梗塞では起こりません。
キリキリするとか、チクチク、または、押して痛いと言うような痛みは、それほど心配ありません。
狭心症や心筋梗塞では、圧迫されるとか、詰まると言うようなことが2〜3分程度、長くて、10分ほど続きます。
そして、起きる時には突然起きますし、痛みの治る時も速やかに、スーッと突然なおります。

 健康診断は、自分の危険因子(リスクファクター)をどのくらい持っているかを知るのに大変役立ちます。
タバコを吸うこと、コレステロールが高いこと、あるいは、中性脂肪が高いこと、尿酸値が高いこと、糖尿病があるかどうかなどです。
このようなものを、一つひとつ排除して行く努力が必要です。
アメリカでも心臓病が多いですが、今アメリカでは、患者に推薦している食事法は、実は、日本食のようなタイプの食事ですから、日本人も、もう一度、従来からの食事を見直す必要があるのではないかと思います。



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