脳と心臓の病気
脳卒中


 脳卒中と言う言葉から言うと、脳に原因があって突然倒れると言う意味があります。
つまり、脳の血管に障害があって、突然倒れる。
それを総称して脳卒中と言います。
 脳卒中を大きく分けると、脳出血、脳梗塞、クモ膜か出血の三つに分けられ、更に、脳梗塞をまた二つに分けて、脳血栓、脳塞栓に分けます。
ですが、一般的にこの二つを併せて脳梗塞と言っている場合が多いようです。脳
多くの場合は、脳出血、脳梗塞、クモ膜か出血を併せて脳卒中と言っています。

 脳には、沢山の血管があります。
その血管が破れて出血し、脳細胞を壊す、あるいは、脳細胞を圧迫すると言う事が起きます。
このようなものを脳出血と言います。
 脳出血の場合は、ほとんど前ぶれがなく、ある日、突然起きます。
それが特長とも言えます。
脳腫瘍のように、徐々に大きくなって来ると、少しずつ、チョッとしびれる、それが、だんだんひどくなってと言うように前兆がありますが、脳出血は突然やって来ます。

 脳梗塞の内で、脳血栓は時には前ぶれがある事があります。
それは、一過性の虚血発作です。
これは、24時間内に元通りに治るものを言います。
手がしびれる、口が聞けない、全身の力が入らない。
このような症状が、30分くらいで良くなるものから、2時間〜24時間で元にもどるものを一過性の虚血発作と言います。

 脳血栓は、血管が徐々に細くなっていって、つまって、その先に血液が行かなくなって脳細胞が死んでしまう病気です。
脳塞栓と言うのは、脳の血管そのものが、そんなに異常が大きくなく、腎臓などにできた血栓が脳の血管につまって、結果的に、血管を塞ぎ、その先に血液が流れなくなります。
クモ膜か出血は、脳出血、脳梗塞と少し違って、脳出血と、脳梗塞は脳の中なのに対し、、クモ膜か出血は脳の外側で起きます。

 脳の表面は、3枚の膜で覆われています。
脳に近い所に薄い軟膜があり、その外側にクモ膜があって、更に、その外側に硬膜があります。
そのクモ膜の動脈が破れて出血するのが、クモ膜か出血です。
これは、元もと少し血管の弱い所があって、これを、動脈瘤と言います。
それが破れて、クモ膜下腔に出血するのです。
これは、年令に関係なく起きます。
 最初の症状は、ものすごい頭痛が突然に起きるのが特長です。
そして、意識を失ってしまう事もあります。

 次に、脳卒中の後遺症についてです。
脳卒中を起こした後で、問題になるのが後遺症ですが、後遺症以前の問題として、脳卒中で死亡すると言う事があります。
脳卒中による死亡率は、死亡原因の第2位です。
ちなみに、第1位は癌で、第3位が心臓病です。

 後遺症としては、脳は体の司令塔のような所ですから、物事を考えたり、言葉を発したり、手足を動かしたりする命令が脳から出ないと、そのような事もできなくなる訳です。
そして、その出血の程度、梗塞の場所によって様々な症状が出るのです
 多く見られる症状として、上肢と下肢の半身麻痺があります。
左右の上肢と下肢が同時に起こる事はめったにありませんが、まれに、右脳と左脳から出ている神経線維が交差する、延髄と言う狭い部分で、出血や梗塞が起こると、左右同時に麻痺する事もあります。
最近は、かなり高齢の方が多くなり、脳卒中も1回でなく、2度3度と起こす時に、何でもなかった反対側の脳もやられて、左右両方が麻痺すると言う事も少なくない事実です。

 運動障害のため、歩行が困難になる、感覚障害があれば、しびれや痛みが起きますし、言語障害も出ます。
その他、尿失禁、物を飲み込めない嚥下障害なども起こします。
実際には、やる気をなくす事が1番問題となると言われています。
やる気をなくすと、自発的にリハビリもやらなくなります。

 もう少し、症状について述べてみます。
例えば、左半身が麻痺していても、その左の半身に注意が行かないと言う症状もありますし、また、手足が麻痺しているのに、全くそれを意識していない事です。
このような人がベッドから降りて立とうとして、転んでしまう事もあるのです。
 食事の時も、左をやられている人は左に注意が行かない事で、テーブルの上にある左側のオカズには手をつけず、右側のものだけを食べると言う事もあります。
服を着たり脱いだりするのにも、前後、上着とズボンの区別がつかずに着る事ができなかったりします。
 このようになっても、リハビリによって少しは良くなりますが、元通りに治す事は現在の医学では皆無に近いです。
しかし、自己の努力によって、残った機能を利用したり、工夫によって自立して生活を送っている方も少なくありません。

次は、治療法についてです。
前述したように、脳卒中には脳出血、脳梗塞、クモ膜か出血がある訳ですが、クモ膜か出血のほとんどが手術になります。
出血した血液の除去と、動脈瘤をクリップで止める手術をします。
そうすることによって、その後は再発はしないと言う事で安心できます。
これは、脳の外側で起こる出血ですから、手足が麻痺するとか、言語障害が来ると言う事が比較的少ないのですが、ただ、その出血量が多いと、4、5日〜2週間以内に、脳の血管攣縮(血管が痙攣を起こして細くなる現象)が起こり、その結果、脳血栓、脳梗塞を起こしてしまうと言う事があります。
このようになると、脳出血や脳梗塞と同じように、半身麻痺や失語症などが出て来る事があります。
これも、出血の量と出血の場所によって異なりますが、早い時期に病院で手術ができれば、全く後遺症が出ないことも多くあります。

 また、脳出血の一部も手術になりますが、出血の量が多いとか、経過を追って、どんどん出血が増えて行くような場合です。
最近は、脳出血の場合でも、できるだけ手術せずに、保存的に経過を見る事も多くなっています。
脳梗塞についても、現在は、ほとんど手術はせず、保存的に処置することが多くなってきています。

 この保存的な治療とは、脳の浮腫を取ってやる治療法で、薬を使って脳圧を下げてやります。
家庭で、脳卒中が起きた場合、なるべく動かさないようにして、早く救急車を呼ぶ事です。
そして、設備の整った病院で少しでも早く治療を受けるようにすることが何よりも大切です。
 救急車が来るまでに大事な事は、倒れた患者を仰向けに寝かせないで、体を少し横向きにするか、顔を横向きにして、嘔吐した物が気管に入らないようにします。
これが原因で死に至る場合も少なくないのです。

 最後に、リハビリのことについてです。
これまでの多くは、状態が少し安定してからリハビリを行なっていましたが、最近では、発症後数日ほどで始めるのが良いとされています。
当然、程度を見ながら血圧の変動がないとか、神経や、その症状が進んでいないなどを観察しながら進めます。
発症してから、何日も寝かせておいてから行なうのでは、他の症状が出たり、筋力が落ちてしまい、リハビリも行なえない事もあるのです。

  最初は、ベッドの上に起き上がる(座る)の訓練から始めます。
これができるようになると、テレビを見る、食事をするなどの事も少しは楽になります。
症状にもよりますが、これができるようになると、次は、日常生活に必要な動作の訓練に入ります。
座る練習 立ち上がる練習 足に装具を付けて、歩く練習など、そして、誰にでも毎日必要な、朝起きてトイレに行く、顔を洗う、歯を磨く、食事をする、衣服の着脱、体を移動する、入浴するなど、自分でできるように訓練します。

 言葉に関しては、言語療法士と行ないます。
失語症の場合には、言葉の概念が分からなくなるので、何を言われているのかも理解できなくなり、繰返し根気良く訓練を続けるしか方法がありません。
リハビリは元の状態にもどしてあげるのが目的ですが、残っている機能を十分に使えるようにしてあげるのも大事な事です。



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