内臓の病気
腎不全と透析療法


腎不全と透析療法(その1)

 腎臓は、尿を作る臓器だと言うことは、皆さんご存じだと思いますが、それ以外にも、私達が生きて行く上で、大切な働きをしています。
そこで今回は、腎臓の病気腎不全と、透析療法についてのお話です。
腎臓の働きを、もう1度ふり返ってみると、昔から、肝腎要と言って、肝臓と腎臓は体を維持するために大変重要な臓器と考えられています。
肝臓は、栄養を全身に送ったり、解毒する働きをしてくれていますし、腎臓の方は、体に貯まった様々な老廃物を体外に出してくれています。

 その他にも、水分の調整として、体がむくまないように、尿として不要な分を外に出してくれます。
また、腎臓は酸塩基と言って、体の中のナトリュウムやカリュウムなどの様々なイオン類の調節をしています。
腎臓の変わった働きとしては、赤血球を作るホルモンのエルスロポリエチンと言う物質を生成していて、これが、少なくなると貧血を起こすようになります。

 それから、レニンアルドステロン系と言う血圧を調節する重要な働きをするのも腎臓です。
腎不全は、その機能の50パーセントが働きを失った状態を慢性腎不全と呼んでおり、そして、30パーセントを切るようになると腎不全と言うことになります。
これにも、急性腎不全と慢性腎不全があり、急性腎不全は、よく蜂に刺された後に腎不全を起こしたり、あるいは、手術の後などに腎不全を起こしたりなど、原因は様々です。
透析の必要な腎不全は、慢性腎不全のことを言いますが、慢性腎不全は、痛くもかゆくもないのです。


腎不全と透析療法(その2)

 今回お話しするのは、慢性腎不全の原因についてです。
一般的には、慢性糸球体腎炎、いわゆる、慢性腎炎と言われているものが1番多いのですが、最近では、糖尿病から透析になる人が40パーセントを越えて、50パーセントに近づいています。
それと、この病気には高齢者が多くなっており、腎臓が、動脈硬化によって腎硬化症になり、そのために、透析になる人が多いです。

 腎不全の進行を防ぐには、様々な薬物療法と、食事療法がありますが、腎臓病の食事療法には、かなり厳しいものがあります。
食事療法で、老廃物の蛋白を減らすことが、なかなか大変です。
そして、これに合わせて減塩食をしなければなりません。

 薬物療法では、きちんと血圧をコントロールすることが大切です。
この病気は、疲労やストレスを避けることも大事ですが、風邪を引かないことも、とても大事です。
と言うのは、喉の炎症があると、腎臓が壊れてくるからです。
扁桃腺が大きくて、扁桃腺を取った人は腎臓が悪くならないと言うこともありますから、蛋白尿が出たら、急いで腎臓内科に行くことが大切です。

 腎不全の人は、生活の改善も必要ですが、腎不全がどんどん進行すると、体がむくんで肺に水が貯まって、心臓が苦しくなり、食事もできなくなります。
最終的には尿毒症になって、味覚もおかしくなります。
さらに、カリュウムが増えてくると、心臓が停止してしまう危険性もあります。


腎不全と透析療法(その3)

 腎臓病の治療法には2種類あって、その1つが血液透析です。
この治療法は、透析の施設に週3回程度通う必要があります。
もう1つは、最近注目されている腹膜透析(PT)と言う治療法です。
この治療法だと、QOL(日常生活の質)を落とさずに、自宅や職場でできる在宅治療の1つです。

 血液透析は、23万〜25万人が受けている一般的な治療法ですが、血液透析をするには、血液を外に出して装置を使わなければならず、週に3回ほど施設に通う必要があります。
方法は、シャントと言って、多くの場合は左手の手首の辺りで、動脈と静脈を繋いで動脈の血液を静脈に流してやります。
それから、静脈に流した一部を体の外に出して、それを、きれいにして、体に戻す方法です。
これは、少し心臓に負担がかかる治療法ですし、1回の透析に4時間ほどかかります。

 これに比べて、腹膜透析は、自分でやる透析ですから、体には優しい上に、在宅治療ですから楽にできます。
この治療の利点は、透析液のバッグを交換する時も、手を洗ったり、消毒したりの面倒がないと言うことです。
この治療法は、積極的に人生を歩みたい人や高齢者、心臓の弱いひとに向いている治療法ではないかと思います。


腎不全と透析療法(その4)

 前回も少し触れましたが、透析治療の一つとして、在宅でできる腹膜透析治療が注目されています。
そこで、腹膜透析をしたいと思った人は、どうしたら良いのかと言うことですが、腹膜透析を扱っている専門機関や医師が、まだ少ないのが現状です。
したがって、腹膜透析と血液透析の両方ができる医者を探すのが先決です。

 そう言う医師が見つかったら、自分に腹膜透析が向いているかどうかを調べてもらいます。
向いている場合は、腹部に腹膜透析カテーテルを入れることになりますが、普通は、腰椎麻酔をして、腹部にカテーテルをしっかりと植え込みます。
植え込んで直ぐに使うとカテーテルが安定しませんので、4、5日して、腹部に透析液を入れたり出したりを始めることになります。
腹膜透析が始まると、1週間ほどで退院できるようになります。
トータルで2週間ほどで、在宅で腹膜透析ができるようになります。

 最も理想的な透析療法は、腹膜透析をしながら、週に1回〜2週に1回ほど血液透析をする方法です。
しかし、体の大きい人は、もう少し血液透析の回数を増やす方が理想的です。
お互いの良いところを組み合わせて、上手に使って行くのが人生を楽しく送れることに繋がります。


腎不全と透析療法(最終回)

 これまで、腎臓病の治療には、腹膜透析と血液透析が大事だと言うお話をしてきましたが、食事療法もとても重要です。
食事療法にも2つあり、透析に入る前の食事療法と、透析に入ってからの食事療法があります。

 透析に入る前の食事療法は、蛋白質を制限することが主です。
透析療法に入ってしまうと、逆に、蛋白質を取らなくてはならない治療法です。
食事療法は、糖尿病があるかどうか、一つひとつ、一人ひとり違い、細かい指定をしなければなりませんから、専門医に充分な指導を受ける必要があります。

 血液透析をしている場合は、蛋白質を取って、カリュウムを取らないようにすることが大事になります。
それに、水分と塩分を取り過ぎないことです。
血液透析は、自分でやるのではなく、他人にやってもらう治療ですから、守らなければならないところは、しっかり守っていないと心臓を傷めやすい治療ですから、塩分制限が特に大事です。
さらに、カリュウムが高くなると、心臓が止まってしまいますので、果物の摂取には注意が必要です。

 次に腹膜透析ですが、この場合は食事制限はほとんど必要ありませんが、両方とも乳製品だけは、あまり取ってはいけない食品です。
乳製品には、リンが多く含まれていて、それが良くないのです。
腹膜透析では、乳製品を控えるだけで他に制限はありませんが、人によっては、乳製品を取らなければならない人もいますので、きちんとしたことを専門家と相談して決めることが大切です。



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