内臓の病気
膵臓の病気


 膵臓は、薄っぺらな肉の固まりで、重さは約80グラムほどのオタマジャクシのような形をしている臓器です。
膵臓の病気が、なかなか見付けにくいのは、膵臓は、胃の後ろ、背中側にあるので診断が難しいと言われます。
 膵臓は小さな臓器にも関わらず、その役目や働きは複雑で、1つは内分泌で、もう1つは外分泌です。

 内分泌は、血糖値をコントロールするインスリンを出します。
膵臓がなくなると、当然糖尿病になりますし、障害されても糖尿病になります。
外分泌は、色々な消化酵素、蛋白質、糖を分解したり、脂肪を分解し、吸収させる役割があります。
このように、内分泌と外分泌の両方の働きを持つ臓器は膵臓だけです。

 膵臓の病気には、膵臓癌の他、膵炎があります。
膵炎は、良性の病気ですが、なかなか厄介な病気で難病になっています。
特に、急性膵炎は、アルコールを飲み過ぎた時や脂肪物を取り過ぎた後に、腹が急に痛くなるような時は、膵炎の可能性が高いです。

 炎症がなぜ起きるかですが、本来、膵臓は酵素を出す時は、膵管を通して腸に出します。
ところが、その酵素が上手く膵管に入らないと、自分の体の膵臓をその酵素で溶かしてしまうのです。
そうすると、膵臓が腫れ上がって炎症を起こすことになります。
 その他にも、膵臓の繊維化を起こしたり、膵石と言う石ができたりします。
そうすると、だんだん消化が悪くなったり、糖尿病になり、廃人になることもあります。

 また、膵管が狭窄したり、嚢包ができて、そこに水や、粘液が溜まるなどの病気があります。
膵臓の病気は、ここのところ20年ほどの間で、癌は2倍に、死亡率は50歳代で5番目ほどですが、60〜70歳代になると3番目になってしまいます。
先に述べた膵炎は、重傷になると死亡率が高い病気です。

 この病気は厚労省の難病に指定されています。
膵炎になる場合が年間で約1万5000人ほどいて、その中の1割ほどが重傷膵炎になっています。
重傷膵炎になると、全身の臓器が働かなくなるような所まで追い込まれてしまい、肺炎を起こす、腎臓が働かなくなる、黄疸になる、多臓器不全を起こすなどの状態になってきます。
そして、その3分の1ほどの500人が、重傷膵炎で死亡しています。

 膵臓の外分泌が侵されると、消化吸収が悪くなり、全身の栄養状態が悪くなります。
下痢をしやすくなったり、脂肪を多く取ると、脂肪の吸収が悪くなり、肝臓の働きが悪くなって、脂肪肝になることもあります。
膵臓癌もそうですが、膵炎も初期の頃は、胃の病気と間違えられることがあります。
 外分泌が侵されると、当然、内分泌も侵されるようになり、血糖値が高くなります。
そうすると、血糖を下げようとして、尿が多くなります。
すると、今度は体の水分が不足し、喉が乾くようになります。

 次は、膵臓癌ですが、この癌は、他の癌と比べものにならないほど増え、ここ10年で2倍に増えています。
膵臓癌のメカニズムは、まだよく分かっていませんが、やはり、食生活の欧米化が考えられています。
 膵臓の癌には2種類あり、通常見られる膵癌、これを通常型膵癌と言い、予後の悪い癌で膵臓の粘膜から出てくる癌です。
もう一つは、予後の良い癌で日本で発見された癌です。
この癌は、粘液産生膵癌と言い、膵癌の中に袋を持っていて、そこから粘液を出します。
この癌は、手術で切除すると、完治する場合が多いです。
最近、膵臓癌が早期に発見されるようになってきたのは、CTスキャンやMRIなどの医療器具の進歩によることが大きいです。

 最初に述べた通常型膵癌は、徐々に進行し症状が出てからだと、相当進んでいると考えなければなりません。
この癌が進行すると、胆管を圧迫して、黄疸になることもありますし、不快な腹痛があったりします。
この癌は、早期に見つかることが少ないことと、手術が大変やっかいです。
と言うのも、膵臓癌の他に、十二指腸や胃にも影響がありますし、胆道やリンパ節まで、広範囲な手術になってしまいます。

 先にも述べたように、膵炎には2つあって、急性膵炎と、慢性膵炎があります。
急性膵炎も、慢性膵炎も重症になってくると難病と言う形で扱われています。
 急性膵炎は、暴飲暴食の後、急に腹部が痛くなり、転げ回るような痛みで、えびのように体を曲げるようにして痛みに耐えようとします。
原因の1番多いのは、アルコールの飲みすぎ、また、アルコールを契期にして起こります。
もう1つは脂肪の取り過ぎ、それと、胆石を持っている方に起こりやすいと言うことです。

 なぜ、暴飲暴食が膵炎の原因になるかと言うことですが、暴飲暴食をすると、胃の中にある細胞から、膵臓の働きを行進させるシグナルが出て、膵臓が働き過ぎ、消化酵素を出し過ぎて、腸に行く前に自分の細胞溶かしてしまい、腫れて炎症を起こすのです。
体型的には、痩せている方に多いと言われますが、最近では、脂肪物を取りすぎる太った方でも起こりやすいと言うことが分かっています。
 慢性膵炎は、急性膵炎から移行した慢性膵炎と、長期に渡って炎症が起こっていて、慢性膵炎になる場合の2種類があります。
ほとんどの患者が、慢性膵炎になると膵臓の働きが悪くなっていますので、時々痛みが出るとか、鈍痛がある、不快感があるなどの症状が多いのですが、中には、急性の痛みを起こすことがあります。

 慢性膵炎を放置しておくと、消化吸収障害を起こすだけでなく、前に述べたように、糖尿病を起こしてきます。
そして、普通ならきれいな膵液を流すのが、分泌液が固まって膵石ができ、更に、膵臓の働きを悪くすると同時に、それが、癌にも移行して行く場合もあります。

 急性膵炎の治療は、痛みを止めることと、膵臓を安静にすることですから、膵臓の働きを少し抑える薬を使って休めます。
慢性膵炎の治療は、膵臓の働きが悪くなっていますから、働かせようとする薬を使います。
この両方を併用して治療を進めて行く場合が多いです。
日常的に注意することは、バランスの良い食事、ストレスや過労を避ける、質の良い睡眠を十分に取ることです。



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