内臓の病気
クローン病


 クローン病と言う病名は、あまり馴染みのない病名ですが、簡単に言うと、腸の色々な所に潰瘍のできる病気です。
これは、主に若い人に多く発症する病気ですが、日本では、あまり知られていません。
昔、アイゼンハワー大統領がかかったことがあり、欧米では有名な病気です。
この病気を発見したのは、ユダヤ系のブリルバーナードクローン先生と言う人で、その名前を取ってクローン病と名づけられました。

 ほの病気の発症は、どんどん若くなっていて、10代の前半から後半にかけて発生しています。
クローン病は、厚生労働省の特定疾患に定められ、その数は平成10年3月で1万5千440人でした。
これは、1984年から年率15パーセントづつ増加しています。
ちなみに、アメリカではクローン病の患者が100万人いると言われています。

 この病気は、原因不明と言われていますが、最近になって考えられていることは、感染説、そして、食事との関係、それ以外に免疫異常の3つがあります。
症状には、大きく分けて次の4つがあります。
1つは、腹痛です。
次は下痢、3つ目は、発熱、4つ目は、忘れがちになりますが、肛門の病変です。
と言うのは、痔ろうが非常に多いのです。
ですから、医者の間では、若い人の痔ろうを見たらクローン病を疑えと言われているそうです。

 前述した腹痛、発熱、下痢の症状は、ごくありふれた症状で、他の病気を考えてしまいそうですが、この腹痛は、食事をすると後で痛くなる腹痛で、下痢も、食事に関係なく昼間より夜間に下痢をするのが特長です。
発熱も、夕方には微熱程度だったのが、夜中に寝汗をかくようなことを伴っている熱が多いです。
この病気になると痩せてきますので、放置しておくと最終的には日常生活に支障をきたすことになります。
症状は、拒食症の症状に似ているため拒食症と間違えられ、拒食症の治療を受けた患者もいますし、症状から風邪と間違えることもあります。
現在では、厚生労働省と、学界でそれぞれ診断基準が作られていますが、医学教育の中で十分行なわれていないのが現状のようです。

 クローン病は、消化管のどこにでも潰瘍ができる病気ですが、その潰瘍は縦に長い潰瘍ができます。
それと同時に、その周りが敷石状の粘膜病変を示すのが特長です。
通常の胃潰瘍や十二指腸潰瘍のように、粘膜の表面から徐々に潰瘍ができるのではなく、クローン病の場合は、表面からだけでなく腸管壁全層性に渡って炎症が起きますから、一見して、正常でも、その下に炎症がある場合もあります。

 潰瘍が最初にできる時、口内炎のようにアフターができますので、それが初期病変と言えます。
クローン病を疑って、最初に訪れる病院は肛門科をお勧めします。
肛門科の医者は、大腸肛門病学の専門家が多いからです。
その方が、診断率が高いと言われています。

 次に、クローン病の診断についてです。
診断は、潰瘍を確認するために小腸や大腸の造映検査を行ないます。
これは、バリュームを使って検査します。
もう1つは、大腸ファイバースコープを使って肛門から入れ潰瘍部の形や、その周りの粘膜の色を見て、更に、その病変部から細胞をつまみ取って来て、顕微鏡で調べます。
原則としては、積極的に診断する方法と、他の病気でないと言う除外診断の2つの方法を取ります。

 治療法ですが、前述したように完治は非常に難しいですから、患者の生活に併せて、日常生活が送れるように考えます。
つまり、症状による苦痛を取り除いてやる治療と言うことになります。
本格的に治療を開始すれば、4つの症状はほとんど同時に良くなります。

 治療方法は、日本では栄養療法が第1に選択され、その次に、薬物療法、そして、最後に外科療法が選択されます。
クローン病の患者は若い方が多いのですが、栄養状態が悪化していることと、同時に、消化管の安静を保つことで、潰瘍の病変や症状が取れることが多いです。
これが、栄養療法です。

 薬物療法は、あくまでも体の反応、つまり、炎症状態を取る、苦痛を取ると言う2つになります。
外科療法は、この病気のために起きる痔ろうなどは、完治するものもありますので、そのようなものは、積極的に手術を行ないます。
病気が長くなると、中には腸が狭くなってくる場合があります。
それと同時に、腸管壁の外側に膿が溜まったり、他の腸と癒着したりすることも出てきますから、このような場合も手術の対象になります。
手術は、あくまでも残った腸の機能を高めるのが目的ですから、非常に小さな範囲の手術です。

 栄養療法の中で、食事療法が大切ですが、若い方の普通の食事は、高脂肪、高蛋白と言うのが一般的ですが、脂肪を制限することと、蛋白質も少なくすることが症状を軽くすることに繋がります。
脂肪は、炎症を強め、腸の動きを促進し、蛋白は、腸管に悪影響を起こす抗原を作る元になりますから、できるだけ少ない方が理想です。

 食事の内容は、米を主体とした昔のような和食が合っています。
しかし、全ての患者に合っているわけではなく、個人こじんで、その食事内容が違ってきますから、食事の記録を付けておき、それを担当の医師に見てもらい、自分に合った食事を見付けるのも大切なことです。
 この病気は、高齢者には見られない病気で、ほとんどが40歳代までです。
病気になると、何もできなくなると言うわけではなく、症状が安定している期間であれば、スポーツもできますし、妊娠、出産も可能です。



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