内臓の病気
腹痛


 救急車で運ばれる患者の中で、1番多いのは腹痛だそうです。
腹痛の中でも、ほとんど1次救急と言って、入院の必要がないものが多いのだそうです。
腹痛を起こす原因には様々ありますが、その一つは、精神的なストレスが原因になっているものが多いようです。
病気ではない腹痛もあり日常的に起こる便秘だとか、月経痛などで起こる腹痛があります。

 病気で起こる腹痛は、潰瘍や胆石、虫垂炎、腸閉塞など様々です。
また、腹部に原因がなくても腹痛が起こることもあります。
心筋梗塞では、普通、左の胸がしぼられるような苦痛感がありますが、なかには、上腹部に痛みがあって、腹痛を訴える場合もありますし、急性肺炎で、腹痛を訴える患者も珍しくありません。

 また、痛み方もいろいろあり、1つは臓器の筋肉が痙攣を起こして痛みがくる場合、もう1つは、虫垂炎や急性膵炎などのように、炎症があって起こる場合があります。
虫垂炎などの場合は、最初は、胃のあたりの鈍痛で始まり、だんだん右の下腹部に痛みが移ってくるパターンです。
痛みも、だんだん増幅されてきますが、中には、最初から右の下腹部の痛みで、しかも、転げ回るような痛みを訴えてくる場合もあります。

 ストレスによる腹痛は、個人差があり、どの程度までを病的とするか、非常に難しいです。
とくに、子どもに多いのが、試験の時期になると腹が痛くなるとか、毎週月曜日になると痛むといったように、明らかにストレスが原因といったこともあります。
 その他に、潰瘍性大腸炎や胃潰瘍、十二指腸潰瘍などのように、明らかに病的なものであっても、その原因として、ストレスが関与していることがあります。
このような場合は、もちろん、薬が必要ですが、ストレスそのものに対しては、生活上の注意をするとか、精神的なケアーをすることが必要です。

 子どもの場合は、ストレスだと言っても、母親に、その理解が少ないことが多く、精神的なケアーが必要だと説明しても、薬を要求することが多いです。
腹痛には、薬を必要としない腹痛もありますし、吐血や下血を伴うものもあります。
その中でも典型的なものに、十二指腸穿孔や胃穿孔などがあります。
これは、瞬間的に激烈な痛みがきます。
何時何分だったと言えるほど、急にくる痛みで、中には激痛のあまり、失神する人もあるくらいです。

 十二指腸穿孔や胃穿孔とは、十二指腸や胃に潰瘍ができて、それが進行して穴があき、そこで、突然の腹痛を起こします。
こうなると、薬でなおすことは不可能で、手術以外に助かる方法はありません。
 また、発作的にくる腹痛に胆石発作があります。
この場合は、手術をしなくても良い場合があります。
取り合えず、痛みを止めて様子をみますが、胆石胆嚢炎と言って、胆石症に胆嚢炎が合併症を起こしている場合は、やはり、緊急手術が必要な場合も多いです。

 腹痛は、痛みの場所によって、ある程度特定が可能です。
上腹部の突発性の痛みは、潰瘍性のものが多いですから、緊急手術が必要なケースもあります。
胆石の場合は、右の上腹部が痛みますし、尿管結石の場合には、背中から腰にかけて痛みがきます。
そ 吐血や下血は、吐血の場合も下血の場合も、鮮血と黒いものがあります。
吐血して、黒いものは胃や十二指腸から、鮮血の場合は、ほとんど食道からの出血です。
下血の場合も、出血の量にもよりますが、一般的に黒い場合(タール便という)は、やはり、胃や十二指腸からの出血が多く、鮮血なら、大腸や直腸、肛門からが多いです。

 次に、救急時の対処の仕方についてです。
先にも述べたように、腹痛の原因には、大きく分けて2つあります。
その1つは、腹の中の筋肉が痙攣を起こして起こる腹痛です。
このような場合は、腹部を温めて筋肉の痙攣を抑えてやります。
そうすると、患者はとても楽になります。

 それから、もう1つは虫垂炎や胆嚢炎など、炎症による腹痛は温めると炎症が進み、痛みもひどくなります。
このような場合は、反対に冷してやります。
 その見分け方は、筋肉の痙攣によってくる場合は、疝痛発作といって、一定の時間をおいて痛みの発作がきます。
胆石や、尿管結石などでは、かなり強い痛みがあり、5〜6分すると一時的に和らぎ、しばらくすると、痛みがやってくるということを繰り返します。

 炎症による腹痛は、波のような痛みではなく、連続的な痛みです。
波状的にくる痛みは温め、連続的にくる痛みは冷してやります。
 参考までに、もう1つの見分け方ですが、腹の痛いところを指(示指・中指・薬指)で抑えて、その手をパッと離します。
その痛みが周囲に走るときは、そこが炎症を起こしています。
これを、腹膜刺激症状とか、腹膜刺激反応といいます。
波状的にくる痛みより、連続的な腹痛の方が危険度が高いです。

 温める方法は、蒸しタオルでも使いすてカイロでも何でもかまいませんが、冷す場合は注意が必要です。
氷や氷嚢で冷す場合、直接患部に当てると、反対に痛みが増すことがあります。
そのような時は、タオルなどで包んで、少し冷たさを和らげてやります。
このようにして、痛みが取れる場合は良いですが、一端取れても、また痛くなるようなら、やはり、専門機関を受信することが必要です。

 専門機関に行く目安は、吐血、下血が伴う腹痛の炎症を伴う腹痛(持続的な腹痛で、痛みのある所を抑えると、痛みが周囲に走る。)の場合です。
それから、腹痛を薬で止めるのは危険が伴います。
というのは、痛みを止めるということは直すと言うことではないからです。
痛みが取れて安心していると、手遅れになることもありますから、素人考えはとても危険です。



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