目と耳 口の中の病気
糖尿病と目の病気


 目には、網膜を栄養している血管がありますが、その血管が悪くなって細くなり、その結果、失明してしまうのが糖尿病網膜症です。
これは、糖尿病患者の30〜50パーセントの人が網膜症を持っており、糖尿病性網膜症は、成人以後の中途失明原因のトップに上げられる疾患で糖尿病の合併症の中で最も重大な合併症と言われています。
この病気は、徐々に進行しますが、自覚症状があまりないと言うことが大きな問題点で、自覚症状がある頃には、もう手遅れと言う場合が多いです。
年をとってくると、視力が低下しますので、その区別も、自分では判断ができないほど、非常に恐ろしい病気です。

 この病気は、眼科にいって眼底検査を行なって初めて分かる病気です。
視力検査だけでは、ほとんど分からないですから、発見が、どうしても遅れる場合が多く中途失明の原因のトップになっています。
 糖尿性網膜症は、糖尿病が発症してから約10年くらいして始まると言われていますが、もちろん、糖尿病をしっかりとコントロールをしている場合と、そうでない場合とでは大きな差が出てきます。
しっかりコントロールをしていると、もっと遅くなるか、失明しないですむ場合もあります。

 網膜症の発見は、まず、内科から眼科に紹介されて、眼科の眼底検査で発見されるケースが最も多いです。
眼底検査は、散瞳剤で、瞳を開いて、眼底の隅々まで網膜を見る検査です。
痛みはありませんが、検査後、少しの間まぶしさが残ります。
糖尿病と診断された場合は、定期的に検査を受けることが大事です。
 糖尿病の合併症は、糖尿病性網膜症だけではなく、腎臓でも腎症が同時に起きることがあります。
その他にも、心臓や脳の血管も障害されることがあり、心筋梗塞や脳梗塞を起こすこともあります。

 次に、糖尿病性網膜症の治療についてですが、その前に、この病気は、眼底の中心ではなくて、普通は、周辺部から始まります。
従って、始まったばかりでは視力は落ちないのです。
徐々に進行して、網膜の中心部に及んでくると視力が落ちてきます。
そして、視力が落ちた、目が霞むなと、気がついた時には、かなり進行しているケースが多いですから、糖尿病のある人は、自分で目が悪いと思わなくても、定期的に眼底検査を受けて早期発見することが大切です。

 老眼や白内障などの見え方と、網膜症の見え方の区別は、自分ではほとんどできません。
糖尿病性網膜症の進行には、3つの段階があります。
最初の段階は、単純網膜症と呼ばれるもので、この状態では、出血や、小さな血管瘤があるだけですから、糖尿病の内科的コントロールをきちんとやっていると、自然に治ってしまうこともあります。
 次の段階は、全増殖網膜症と言って、網膜の血管鞘が閉塞して、血液の通わない網膜ができてしまいます。
この状態では、レーザー光凝固と言う治療法を行ないます。
この治療をすると、進行をくい止めることができます。
 そして、最終的な段階を増殖網膜症と言って、血管が閉塞した部位に、新生血管と言う新しい血管ができてしまいます。
新しい血管は、非常に弱い血管ですから、その血管から大量に出血して目が見えなくなってしまったり、あるいは、増殖膜と言う膜ができて、その膜が網膜を引っ張ってしまうために膜が剥がれて、見えなくなってしまうこともあります。
また、虹彩に新生血管ができて、緑内障を起こして眼圧が上がって見えなくなってしまう場合もあります。

 この状態では、光凝固、あるいは、手術と言うことになります。
レーザー光凝固と言うのは、レーザーで網膜の悪い部分を焼いてしまう治療法で、これをやると、しばらくの間、、一時的に暗く見えたり、視力が少し落ちたりすることがあります。
この治療は、進行を止めるだけで、視力を良くする治療ではありません。
増殖網膜症がひどくなると、手術が必要になります。
手術の方法は、白目のところに3ヶ所ほど小さな穴を開けて、そこから、コンピュータでコントロールされた、非常に精巧な器械を入れて、眼底の出血や、増殖膜を取り除きます。

 次に、糖尿病性白内障についてです。
白内障の患者の内、老人性白内障に継いで多いのが、この糖尿病性白内障です。
これは、糖尿病によって代謝異常が起き、水晶体が濁って白内障が起こりやすくなるためです。
つまり、カメラで言うと、レンズの部分が濁ってしまい、物がはっきり見えなかったり、霞んで見えたり、何重にも見えたりすることが起こります。
治療は、手術をして、濁った部分を取り除き、新しい人工水晶体(眼内レンズ)を入れてやることで、よく見えるようになります。

 白内障の初期症状は、明るいところや外に出た場合に、まぶしいと感じることが多いです。
白内障になると、これまでと、まぶしさが違って、夜間の運転は、まぶしくて怖いとか、できないと言う人もいます。

 糖尿病性白内障の場合は、眼内レンズを入れても、その周辺が再び濁ってくることがあります。
そうなると、網膜症になっていた場合、検査などに影響が出ますので、濁らないようなものを選ぶ必要があります。
いずれにしても、糖尿病のコントロールがきちんとできていないと、再発の心配は残ります。
最近では、眼内レンズの材質も良くなり、技術の進歩と共に手術に要する時間も短くてすむようになりました。
尿病になった人は、網膜症のない場合でも、2〜3ヶ月に1度、網膜症を起こした人は、1ヶ月に1度は検査を受けた方が良いと思います。

これまで、糖尿病による眼疾患の内、網膜症と白内障について述べましたが、その他にも、視神経症や眼球運動障害、屈折の変化、角膜症などがあります。
視神経症は、網膜に写った情報を脳に伝える所ですが、その神経を養っている血管が、糖尿病のため詰まってしまうことがあります。
そのために、視野の一部分が急に見えなくなったりします。
この治療は、ほとんど可能性がないと言われるほど難しいと言われています。

 また、眼球運動障害は、両眼の内、どちらかの眼球がずれて物が2つに見えてしまう病気です。
その原因は、糖尿病のために、眼球を動かす筋肉を動かす神経が麻痺するためです。
これは、自然に治る場合が多いです。

もう1つは、脳幹部の中枢神経で、やはり、糖尿病のため血管が詰まって起こるものですが、これは、かなり重傷になります。
その他に、物が2つに見える場合がありますが、それは、頭の中に脳動脈瘤ができて、それが神経を圧迫して起こります。

 次に、屈折変化です。
これは、急に近視になったり、遠視になったりします。
糖尿病のコントロールによって、糖尿病が良くなると遠視、悪くなると近視になると言われています。
ですから、このような人は、両方のメガネを持つことになります。

 最後に、糖尿病による角膜症についてです。
角膜の1番表面には、角膜上皮がありますが、ここの細胞が弱くなって、自然に脱落します。
これが脱落すると非常に痛くて、夜中にでも眼科にかけ込むことになります。
そして、涙の分泌も悪くなることもあり、その成分も悪くなり、重傷の角膜疾患になることもあります。
この治療は、基本的には点眼薬で治りますが、角膜上皮を強くすることは、非常に難しいことです。



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