まず、先天性股関節脱臼についてです。
股関節とは、足の付け根の関節のことを言い、そこの関節がズレてしまう病気を言います。
これには、先天性のものが多く、股関節脱臼があると、立つのが遅かったり、ハイハイをしなかったり、もっと小さい時には、足の動かし方が普通の子どもと違って鈍いことがあります。
先天性股関節脱臼は、母親のお腹にいるときに、普通は関節を曲げた状態になっているのですが、それが、臀位分娩と言って、お尻から出てくる場合があり、足『きおつけ』をした状態で出てくるのです。
赤ちゃんの体内環境で、このように『きおつけ』の状態にある場合には、股関節脱臼になる確率が高くなります。
また、昔は巻きおむつが多かったために、股関節脱臼が多かったのですが、今では10分の1に減りました。
産まれたばかりでは、股関節脱臼を見付けるのは難しいですが、最近では、乳児検診をきちんとするようになりましたので、足の開きが悪いとか、長さが少し短いなど、早期に発見できるようになってきました。
股関節脱臼の発祥率は、0.1〜0.3パーセントほどで、男女比は1対5〜1対9で、女性に多いです。
これは、分娩の際、子宮が収縮するために関節を弛緩させるホルモンのリラキシンホルモンを分泌するのですが、これが、特に、女の子に働くことが多いからです。
後は、遺伝的なこともあります。
股関節脱臼の治療法は、昔は、股関節を曲げた形でギプスをやっていましたが、今では、ギプスは使わなくなりました。
生後3ヶ月から本格的な治療を始めますが、ギプスの替わりにリーメンビューゲルと言う道具を使います。
リーメンとはひものことで、ビューゲルとは馬のアブミのことです。
この装具を使って、ひざと股関節を曲げた形で治療します。
これを付けて1〜2週間で、足の開きが良くなりますが、治ったわけではありません。
治るまでには2〜3ヶ月ほどの期間を要しますが、これでも治らない場合は、ギプスを使うことになります。
成人になってしまうと、骨盤の関節は正常に発育しても、大腿骨頭が巨大化し、関節に合わなくなることがあります。
そして、股関節症と言う病気になることもあります。
次に、斜頚と内反足についてです。
斜頚とは、首にある胸鎖乳突筋と言う筋肉に瘤ができる病気です。
両方にできることはありませんが、できた方の胸鎖乳突筋が縮み、つまり、右の斜頚なら、頭は右に傾き、顔は左を向く形になります。
この瘤は、生後1週間くらいででき、それが1ヶ月ほどすると、かなり大きくなりますが、その後6ヶ月ほどで、今度は、なくなってしまいます。
放置しておいても99パーセントは、自然に治ってしまうものですが、まれに、そのまま筋肉が固まってしまい、首が傾いたままになってしまいます。
斜頚になると、目の線と口の線が少し斜めになって、頭の形もいびつになります。
そのような子どもには、生後1ヶ月くらいから、斜頚用のキャップを使って治療すると、頭の形も良くなり、斜頚も治ってきます。
これまで述べた斜頚は、筋性斜頚と言いますが、その他に、炎症性斜頚があります。
これは、口から入った菌が、頚部のリンパに及んで炎症を起こし、それが斜頚になることがあります。
その他にも、首の骨がずれて斜頚になることもありますので、斜頚に気がついたら、できるだけ早く専門機関の診察を受けることが大切です。
次に、内反足についてです。
これは、かかとの骨が内側にむいてしまうもので、足の甲が下をむいてしまうのです。
これでは、とても立つことはできません。
発症率は、1500人に一人ほどで、脱臼とは逆に男の子に多く見られます。
これも、見つかり次第治療しますが、治療は、ギプスを使って少しずつ矯正して行きます。
半年ほどギプスを使って治療をした後、今度は、装具を使って治療を続けます。
次は、肘内症と、上腕骨窩上骨折についてです。
肘内症とは、肘の関節の外側にある骨が抜けてしまう病態をいいます。
これは、骨頭が小さいため、その部分を支えている輪状靭帯を通り抜けてしまうのです。
子どもと手をつないで歩いているとき、子どもが転びそうになり、その手をグッと引っ張ったりすると、抜けてしまうのです。
この場合、肩から下をダラッとして、肩が抜けたように見えますが、子どもの肩は、そんなに簡単に抜けるものではありませんから、ほとんどが肘内症なのです。
一方、上腕骨窩上骨折ですが、肘には、内上顆と外上顆と言う、内側と外側の出っ張があります。
その上の部分で折れることから、上腕骨窩上骨折と言っています。
これは活発な子どもに多く、運動会の時期などに多発します。
跳び箱を跳んでいる時に、肘を真っ直ぐに伸ばした状態で、ドーンと手を突いたときに折れることが多いです。
これは、5歳〜10歳くらいまでの子どもに多い腕の骨折です。
この骨折は、折れた骨が大きくずれていない場合は、肘内症のように腕をダラッとしますので、肘内症と間違えられます。
肘内症の場合は、肘は腫れませんが、上腕骨窩上骨折の場合には、かなり腫れてきます。
この骨折は、適切な治療をしないでいると、ホルクマン拘縮と言う、やっかいな病気になることがあります。
ホルクマン拘縮とは、前腕の循環障害を起こして、腕の筋肉が全部壊死を起こし、腐ってしまうことがあります。
骨折後、指を動かすと痛いとか、腕がしびれる、脈が触れないなどの症状があれば、上腕骨窩上骨折の可能性があります。
最後は、オスグット病と、ヘルニアについてです。
オスグット病ですが、これは、大腿部を使い過ぎる子どもに多い病気です。
サッカーや、バスケットボールなどのスポーツを、烈しく、長時間行なうとなります。
これは、大腿部の筋肉が膝の皿の下の骨に付いているのですが、そこに、常に機械的なストレスが加わっていると、炎症が起きてくる病気です。
ひどくなると、自分の筋力で骨折を起こすこともあります。
炎症のあるときは、オスグットバンドを巻いて、骨に影響が起きるのを防いであげますが、それでも痛みが出るような場合には、少しスポーツを休ませることが必要です。
次に、ヘルニアですが、子どもにもヘルニアがあります。
骨が成長するのは、骨の骨端線と言う部分が成長して行きますが、背骨にも骨端線があります。
この部分は、力学的には弱く、背骨と背骨の間に、ショックを和らげるための椎間板が入っています。
椎間板の中には髄核があり、ジャンプをしたり、強く腹圧がかかったりすると、その髄核が飛び出すことがあります。
その時、骨も一緒に欠けることがあり、これが大人のヘルニアと違うところです。
そして、もう1つの違いは、大人の場合はどちらか一方の神経が圧迫されるのに対し、子どもの場合は両方の神経が同時に圧迫されると言うことです。
治療は、保存療法では難しく、手術を行なうことが多いです。