内視鏡が発明されてから、医学は飛躍的に進歩しました。
従来見えなかった所が見えるようになり、手の届かなかった所に手が届くようになり、昔なら、手術をしなければならなかったのが、手術をしないで治療ができるようになりました。
内視鏡は、目と手を持った治療用器具ともいえるのではないかと思います。
先端に付いている直径2〜3ミリのレンズは、120度の範囲の広さを見る事ができます。
内視鏡を使った治療法の一つに、止血があります。
食道関係では、食道静脈瘤の破裂、胃潰瘍の出血、急性胃粘膜障害による出血などがあります。
その他、癌による出血もあります。
次に、その止血の方法についてです。
その一つとして、内視鏡の先端に小さな輪ゴムを拡げたようなものを付け、それを出血している部分にかぶせて、それが縮む力で止血をします。
もう一つの方法は、胃潰瘍などの出血を止める方法ですが、これは、内視鏡の先にクリップのような物を用意して、それで血管を挟んで止血をします。
どうしても出血が止まらない時は、薬を使います。
この薬は、水分に触れると瞬間的に固まる薬品です。
これは、血管の中まで、固まった血液で、栓をするようにして止血します。
しかし、この方法は、不安定な部分もあって命に係わると言うような緊急な事態以外はあまり使いません。
また、じわじわっと出血しているような場合は、99パーセントまで純粋度を高めたアルコールを、その場所に少量注射します。
そうすると、そこの細胞の水分が瞬間的に失われ、ギュッと縮んで止血が行なわれます。
次は、内視鏡による除去治療に付いてです。
その代表的なものに、ポリープの除去治療があります。
ポリープとは、局所から飛び出た隆起物と定義されます。
内視鏡の中に、2.8ミリほどの空洞があり、その中に色々な道具を通して様々な仕事ができるようになっています。
ポリープの除去の場合は、先端に針金の輪を作っておき、その輪をポリープの根元にかけて、ジュッと絞ります。
この状態で、絞った輪に電流を流して瞬間的に焼き切ってしまいます。
この方法ですと、出血もしないですみます。
除去されたポリープは、そのまま外に取り出され、顕微鏡などで調べて、良性か悪性かの判定をつけます。
このように、飛び出ているものは簡単に除去できるのですが、中には、平らな状態のものもあります。
平らな状態ですと、輪をかける事ができません。
そこで、どうするかですが、病変の下に生理的食塩水を注入して、盛り上げ山のようにします。
そこに輪をかけて絞り、ポリープと同じようにしてから除去します。
次に、狭窄解除のお話です。
胃の出口や十二指腸などに、潰瘍が繰返しできると、それが直ってもその部分が狭くなってしまい、物が通らなくなると言う現象が起きます。
このような時は、内視鏡の先から丈夫な風船を出し、その風船を膨らませて5分ほど置いてから取り出すと、その部分は1年くらいは、その状態を保つ事ができます。
また、癌などで狭くなった所や、胆管などの狭くなった所も拡げる事ができるようになりました。
内視鏡の2.8ミリほどのトンネルの中に、プラスチック製の物を入れて置き、それを、狭くなっている所で出し、心棒になっている物を引き抜くと、網のようになって拡がると言う具合です。
最近では、狭心症の治療にもこの方法が取られています。
心臓の細い血管を、この方法で拡げると言うのですから素晴らしい技術です。
最後に、異物を飲み込んだ場合の除去です。
これも、内視鏡を使って取る事が多いようです。
特に、赤ちゃんは、手に触れる物を何でも口の中に入れるのでとても危険で、ビーだまや、コインなどを飲み込む事故が多発しています。
また、大人でも、酔っ払って焼鳥の竹串をかんで、折れた部分を飲んでしまったとか、食事中に、ブリッチの部分入れ歯が外れて、それを飲み込んだなどの事故もあります。
このような時、内視鏡を使ってその場所を探し、どのような物かを確認してから、別の取り出す道具を付けた内視鏡を使って除去します。
医学も医療器具も、めざましい進歩をとげていますから、近い将来、体にメスを入れることなく、手術や治療ができるようになるかも知れませんね。