私には経験がありませんが、自分のいびきで目を覚ましたなどと言う落語みたいな話を聞きますが、一体 いびきの原因は何なのでしょうか?
まず、いびきの原因を説明する前に、鼻の入り口から、声を出す声帯までの空気の通り道を上気道と言います。
その上、気道のどこかで睡眠中に異常な騒音が出るのがいびきと言われるものです。
眠っていると、上気道のどこかが狭くなることがあり、上気道と、その狭いところでいびきの振動音が出ます。
また、眠っていると、全身の筋肉が緩んで、喉の筋肉も緊張感がなくなり、喉チンコと呼ばれる口蓋垂と、その上の軟口蓋部分の振動が、最もいびきの出る場所です。
いびきの出る人で、1番多いのは鼻の悪い人で、アレルギー性鼻炎や、花粉症、蓄膿症、それから、鼻や喉に腫瘍(しゅよう)ができた場合など、粘膜が腫れて鼻の中が狭くなると、いびきが出やすくなってきます。
風邪をくり返してひいたり、慢性鼻炎やアレルギー性鼻炎などによって、慢性的な刺激が鼻に加わって、鼻の粘膜が腫れてくるのですが、何年間にも渡って徐々に進行して、鼻詰まりが進行してしまいます。
昼間、活動している時は、鼻が詰まっていなくても、眠ってしまうと交感神経の緊張がとけて、副交感神経が優位になってきます。
そう言う時に、鼻の粘膜が腫れやすくなります。
鼻詰まりの傾向にある人は、いつの間にか口を開けて呼吸するのが習慣になっているので、睡眠中も、口呼吸になっていることが多いです。
人間は、鼻呼吸が正常な呼吸法ですから、口呼吸では、いびきも当然でることもありますし、体に悪影響も出ます。
いびきと言っても、病気ではないいびきを単純いびき症と言い、これは、健康な人にでも起こりますので、本人には全く自覚症状はありません。
しかし、単純いびき症でも、常習的にいびきをかいていると、口蓋垂がいつも振動することで、慢性的に肥大して病的ないびきになることもあります。
もう少し、詳しくお話すると一口にいびきと言っても、睡眠中に息を止めてしまうような睡眠時無呼吸症候群と言われるものと、それとは異なるいびきの単純いびき症とは分けて考える必要があります。
睡眠時無呼吸症と診断されるものは、どのようなものを言うのでしょうか?
睡眠時無呼吸症には定義があり、睡眠中に10秒以上呼吸が停止するのを無呼吸と言っています。
その無呼吸が、1時間に5回以上あるとか、一晩に30回以上起きる時に、睡眠時無呼吸症候群と言っています。
これらは、ほとんど上気道が狭くなって起きる閉塞性の無呼吸症候群と言われているものですが、脳の呼吸中枢に問題があって、呼吸運動そのものが停止する中枢性の無呼吸症候群と言うのも、まれにあります。
一般的に多い無呼吸症候群の原因は、やはり、肥満です。
舌や喉の周りに、脂肪が付くことによって、上気道が非常に狭くなることで起こりますが、肥満傾向の70パーセント以上が睡眠時無呼吸症候群になっているのではないかと言われています。
これらの症状を、自分で判断する方法は、寝てしまうと全く分かりませんから難しいのですが、テープレコーダーで録音を取ってみるのも1つの方法だと思いますが、最も目立つ症状は、昼間の居眠りがあります。
熟睡した感じがなく、倦怠感が続いたり、集中力に欠けていたりなどの症状も、睡眠時呼吸障害を疑う、あるいは、判断材料になります。
これをほおっておくとどうなるかと言うことですが、高血圧や不整脈、心筋梗塞や狭心症、虚血性の心疾患、脳血管障害など、いわゆる、生活習慣病といわれる病気になりやすくなります。
このような無呼吸中には、体の中では酸素の濃度が低下して行くわけですから、脳の中枢や、肺、心臓などに十分に酸素が供給されなくなりますので、正常な状態を保つことが難しく、むしろ、病的と言えます。
このような状態の人のはっきりとした統計はありませんが、アメリカでは、十数パーセント、わが国も数パーセントの人がいると言われています。
次に、いびきの種類ですが、可愛らしいいびきもあれば、ライオンが吠えているようなダイナミックないびきまであります。
そのような大きないびきは、何が原因なのでしょうか?
1番大きな振動音が出る場所は喉です。
口蓋垂が太くて長い人、口蓋垂から左右の扁桃腺まで続く 粘膜のひだが幅広く垂れ下がっている人、また、扁桃腺の大きい人、下アゴが小さかったり、幅が狭くて後ろに引っ込んでいるようなタイプの人が、いびきが出やすいと言われていますが、日本人の顔の骨格がいびきが出やすい骨格と言われています。
また、舌や喉に脂肪が付いている人は、大半が肥満タイプの人ですが、一見太っていなくても、内臓肥満がある人は、首の周りについた脂肪が喉を狭くしてしまうためにいびきをかきやすいのです。
その他にも、年を取ってくると喉の筋肉の緊張が緩みますので、粘膜の振動が大きく起こっていびきも大きくなります。
このような理由から、肥満の人は、痩せることによっていびきが改善できますので、まずは減量することに努力が必要です。
年もそんなに取っていないし、肥満でもないのにも関わらず、大きないびきをかくひとがいますが、そのような人の中には、寝る前にアルコールを飲んでいる人に多く、飲み過ぎや食べ過ぎで、横隔膜が上がってしまい、それが呼吸障害をもたらすことも多いです。
あとは、最近は精神安定剤や睡眠薬を常用している人が増えていますが、そう言う人も喉の筋肉の緊張が緩んで、いびきが常習的に出やすくなります。
いびきを止めるには、横向きに寝るとか、上半身を上げるようにして寝ると、少しは軽くなります。
次は、いびきを自覚したら何科に行けば良いのかについてお話しします。
睡眠中に、どんな姿勢を取っても、さまざまな策を取っても、持続的に大きないびきが出る人や、家族に迷惑のかかるようなひどいいびきの場合は、まず、呼吸がおかしいと考えて、呼吸器内科で検査を受けることをお勧めします。
はっきり、鼻が悪いとか、口を開けて呼吸する、いわゆる、口呼吸になっているような人は、耳鼻科で診てもらうと原因が分かると思います。
その結果、呼吸器や鼻に原因がない場合は、歯科や、口腔外科などで診てもらうことも必要です。
このようにして、どこが悪いのか原因が分かれば、その治療や予防対策ができます。
多い原因には、口呼吸になっていることがありますが、そう言う時には、市販されている口呼吸用のテープがありますので、それを利用するのも良いと思います。
しかし、鼻の悪い人は、慣れるまでは大変かも知れません。
その他には、マウスピースのような物を口の中に付けて、ベロー(舌)が下の方に沈まないようにする方法もあります。
鼻が悪くて治療をする場合は、まず、鼻の通りを良くすることが必要です。
その治療には、さまざまな薬を使って診る場合が多いですが、これは、鼻の粘膜の状態にもより、薬で良くならない時には、手術をする場合もあります。
手術は、鼻の中の粘膜の腫れているところを、レーザーや、最近は、ラジオ波 凝固治療といって、これを使って外来治療もできるようになりました。
それでも通らない場合は、入院をして鼻の粘膜を切除するとか、喉が狭くなっている場合には、扁桃腺や、その周囲の粘膜を切除するような手術も行われています。
このような手術を行う前に、睡眠中の様子を家族の人にビデオに撮ってもらったり、自分でも把握することが大事です。
これまで、いびきについてお話してきましたが、基本的には、肥満傾向の人や、鼻の通りの悪い人、口を開けて寝る習慣のある口呼吸の人、このような人がいびきをかきやすいとお話してきましたが、健康な人でも45パーセント程度の人はいびきをかいています。
常に、いびきをかく、いびきの常習者は25パーセントもいると言われていますから、4人に1人は、いびきの常習者です。
ですから、全てが病的と言うわけではないのです。
前にも述べたように、いびきそのものは命を脅かすようなものではありませんが、ただ、ほおっておくと、健康を害したり、日常生活に悪影響を及ぼしていることがあります。
自分自身で、病的かそうでないかを判断する方法は、睡眠がどれだけ傷害されているかどうかと言うことです。
日中に眠気が出るとか、だるい、何か体調がおかしいと言う時に、いびきが原因ではないかと疑ってみることも必要です。
男性も女性も、いびきで悩んでいる人は結構いるのではないかと思います。
睡眠時無呼吸症候群などでも、たちまち命に関わることはありませんが、慢性的ないびきが、生活習慣病の原因になることがありますので、きちんと原因をつかむことが大切です。
治療費は、レーザーを使った治療でも、保険が使えますので1万円前後ではないかと思います。
いびきは、肥満の人に多いと言われますから、暴飲暴食をひかえて、適度な運動を行うなど、きちんとした生活習慣が何より大事です。